英ビクトレックスは樹脂による金属代替を推進する。この5月にPEEK樹脂を上回る特性を実現した新開発のVICTREX ST樹脂を上市し、全世界で本格的な用途開拓に乗り出した。「(金属を代替する際に)課題となる疲労強度に優れている」(マーク・マダンST樹脂開発担当)ことから、エネルギーや自動車をはじめ航空宇宙、エレクトロニクスといった分野での採用を見込む。すでに5月に開催された米国とドイツの展示会に出品しており、日本でも6月24?26日に東京ビッグサイトで開催される機械要素技術展で展示する予定だ。
ポリケトン系樹脂の新製品VICTREX ST(PEKEKK=ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン)は、PEEK樹脂を上回るハイパフォーマンスな素材として開発された。「各用途分野におけるユーザーの声を聞いて開発を行ってきた」(同)といい、ナチュラルグレード(ST45G)は熱変形温度が172度CとPEEK(152度C)やPEEK?HT(163度C)に比べて高く、とくに150?200度Cの温度範囲における機械的特性を向上。
また、ガラス繊維強化(ST45GL30)グレードの熱変形温度は380度Cを示し、同じ30%ガラス繊維強化グレードであるPEEK(328度C)やPEEK?HT(360度C)を上回る性能を発揮する。電気特性、耐薬品性、寸法安定性、低透水性や低吸水性といった特性についてもPEEK樹脂と同等のレベルを維持しており、まさに過酷な環境下で使用されるアプリケーションを前提とした素材設計となっている。
最大の特徴は標準の射出成形機による成形加工を可能としていること。特別な装置を必要とせずに生産性の高い射出成形が適用できるため、素材コストはPEEK樹脂に対して割高となるが複雑な加工を要する金属部品などでの代替によって「トータルシステムとしての大幅なコスト低減が可能」(同)だ。ビクトレックスでは、その特性からディスクドライブキャリアやコネクター、シールリング、テストソケット、電線被覆、バルブプレートといったアプリケーションにおいて性能向上や長寿命化、コスト低減化に貢献できるとしている。
本格展開に際しては、今回はナチュラル(STG45)グレードとガラス繊維を30%コンパウンドした強化(ST45GL30)グレードの2タイプを用意するとともに、切削加工用にブロックでの供給体制を整えている。今後、ユーザーニーズに対応してグレードの拡充やフィルムやコーティングなどでの商品化も検討していく考え。同社では金属代替をターゲットに高付加価値分野をカバーする戦略商品として「PEEK樹脂で蓄積したノウハウをもとに展開していく」(同)。

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