差別化戦略の一環として自動車用薄板の利用技術開発に取り組む住友金属工業。対象とする分野は素材から成形加工、評価・試験、シミュレーション技術と広範囲におよぶ。国内最多の実用化実績を有するハイドロフォームでは新たに板ハイドロフォーミング技術(ポンチレスハイドロフォーム)の提案を進めるなど、自動車の高度化ニーズに対応したソリューション展開を積極化させている。同社では「鉄のポテンシャルを高めながら業界でのプレゼンスを高める」(大石公志自動車技術部長)考えだ。
同社が、従来の素材販売から利用技術をはじめとするソリューション提供へとビジネスモデルの転換を図ったのが90年代の後半。2001年にはグループの幅広い素材ネットワークを活用したカスタマーアプリケーションセンター「SMICAT」を立ち上げるなどその取り組みはグループ全体に及ぶ。
成形加工技術としてとくに意識して取り組んでいるのが熱間プレス、テーラードブランク、ハイドロフォーム。熱間プレスは鋼板ブランクを加熱してプレスするもの。60キログラム級鋼板を熱間プレス後に150キログラム級超まで強度を高めることが可能なほか、ハイテンの冷間プレスで課題となるスプリングバックを解決できるなど寸法精度に優れ、低荷重で成形できるという利点を有する。
同社は国内メーカーとして最初に導入した実績を持ち、成形中に焼入するための金型冷却水路の設計技術といったソリューションを確立することで実用化。これまでにAピラーやバンパー、ドアビームといった部位で1500メガパスカル級のハイテン部材が採用されている。その優位性から980メガパスカル超ハイテンについては熱間プレス用に特化した展開を図っている。
軽量化や部品数削減の観点から一般化しているテーラードブランク(TWB)についても独自の取り組みを行っている。TWBとは、強度や厚さなどが異なる材料を使用部位に応じて部品形状に溶接したもので、すでにサイドパネルやドアインナー、フロントフロアなどで実用化されている。同社では80年代から開発に着手し、これまでに材料開発をはじめ溶接技術や品質モニタリング技術などのソリューションを拡充してきた。2001年には子会社の住金プラントがTWB装置の販売を開始し、グループで素材から設備機器までをフォローする「(ユーザーの)構想から量産までを手伝える」(同)体制を整えている。
また、鋼管に水圧と軸圧縮力を付加して金型に沿った製品形状を得るハイドロフォームでは、型締め力3500トンの国内最大級設備を活用して用途拡大に取り組んでいる。板ハイドロフォーム技術はこの技術を板材に適用するもので、高強度化の観点から普及が進む閉断面構造部材において複雑形状を容易に成形できるのが特徴。また、打ち抜き技術の一種であるハイドロピアシングでも高精度な外向き方式をNSKステアリングと共同開発するなど応用展開を図っている。
一方、評価技術では05年に世界最大・最速の落錘試験装置を導入。実車フルラップの対応と時速96キロメートルを可能とする能力からこれまでに3000体近い試験を実施しており、その成果の一つとして従来比2倍のエネルギー吸収効率を有する高効率クラッシュボックスの開発につながっている。

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