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2016年07月20日 前へ 前へ次へ 次へ

スマートセルインダストリー バイオ時代幕開け【上】

 「スマートセル」――。経済産業省が編み出した新語である。定義は「高度に機能がデザインされ、機能の発現が制御された生物細胞」。そしてこのスマートセルを用いた産業群を、"スマートセルインダストリー"と呼び、次世代の重要な産業として育成する。3月から有識者会議で今後の方向性の議論を進め、さきごろ中間報告書をまとめた。タイトルは「バイオテクノロジーが生み出す新たな潮流―スマートセルインダストリー時代の幕開け―」。副題に新語を繰り出した。その狙いは、近年のバイオ分野における急激な技術革新とそれがもたらす劇的な環境変化があり、それが非連続的なものだと強調することにある。

 ◇ ◇ ◇

 バイオテクノロジーをめぐる技術革新は各分野で速度を速めている。なかでも最も影響が大きいのが(1)ゲノム解読のコスト低減と時間短縮(2)人工知能(AI)技術の進化(3)ゲノム編集技術の登場―の3つ。

 ゲノム情報蓄積

  2005年以降に次世代DNAシークエンサー(DNA解析装置)の開発、普及が進み、早く安いゲノム情報解読が可能になった。この7年で解読コストは1万分の1に低下し、劇的な時間短縮も進んでいる。すでに10万円の費用で1日かけずにヒトゲノムの解読が可能になった。さらなるコストダウンと時間短縮も射程に入っている。
 かつては膨大な費用と時間を要した生物の遺伝情報が、低コストかつ短時間でデジタル化できるようになった。この成果を受け、日米欧各国は公的機関が管理する塩基配列データベースに大量の情報を蓄積しつつある。
 当然のことながら、IT技術の急速な進歩はバイオ分野でも寄与している。生物情報の解析ソフトが充実するとともに、最近注目されているのがディープラーニング(深層学習)などAIの技術革新。膨大な情報のなかから、カギを握る遺伝情報を高精度に抽出し、抽出情報を基にゲノムの設計を分析しようという動き。それにより、ゲノム配列と生物機能の関係解明、機能デザインに活用しようという研究が実用化段階に入っている。

 応用領域広がる

 さらに、13年初めにはゲノム編集技術を革新する「クリスパーキャス」が登場した。ゲノムのターゲット部位をピンポイントで切断したり改変する技術だ。従来技術の100分の1以下と、画期的な低コスト化も果たした。狙った通りのゲノム編集や代謝制御が実現できれば、例えば有用物質を大量に生成させる生物機能をデザインするようなことが可能になる。生物による物質製造が、これまで以上に高度化され、応用領域が大きく広がろうとしている。
 バイオ技術の最も重要な基盤であるゲノム関連分野で、非連続的な技術革新が次々に実現。要素技術の低コスト化、高精度化、高速化・期間短縮をもたらし、それがさらに勢いを増している。経産省はこうした状況を踏まえ、技術の出口となる産業群を4つに整理。ものづくりの変革を促す「スマートセルインダストリー時代の幕開け」を提唱した。


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