軽量化ニーズの高まりを背景に自動車分野における高張力鋼板(ハイテン)の開発・実用化が加速している。新日本製鉄と神戸製鋼所がボディー骨格部品向けに世界で初めて1180メガパスカル級ハイテンを実用化する一方、JFEスチールは外板パネル部品として新たにフードパネルへの採用を実現した。世界的に燃費規制が強まるなか、車体軽量化の必要性が加速度的に高まっており、鉄鋼各社では製品の高性能化を通じてハイテンのさらなる適用拡大を推進していく。
難成形部品であるボディー骨格には、強度と相反する性質である成形性の制約から、使用されるハイテンは980メガパスカル級までとなっている。今回、新日鉄と神戸製鋼が開発した1180メガパスカル級ハイテンは、フェライト(硬質組織)とマルテンサイト(軟質組織)の微細組織の最適化により伸び特性を従来の同強度材に比べて約2倍に向上させたのが特徴。現状の980メガパスカル級を上回る水準を有しており、これにより冷間プレスによる成形加工を実現した。
新ハイテン材を採用する日産自動車では、新スポット溶接工法などの開発により2013年に発売する新モデルへの適用を決定。センターピラーのインナーやルーフサイドレールに適用される見込みであり、1180メガパスカル級ハイテンへの置換により板厚を20?30%薄くできることから1台当たり15キログラムの軽量化が見込まれている。
一方、JFEスチールは、440メガパスカル級高張力GA(合金化溶融亜鉛メッキ)鋼板「ユニハイテン」がいすゞ自動車の新型ピックアップトラック「D?MAX」のフードパネルに採用された。ユニハイテンは、フェライト中に微細なマルテンサイトを均一に分散させることで、永久変形を防ぐ強度(耐デント性)とプレス成形時に発生する局所的なゆがみの抑制(耐面歪み性)を高い次元で両立した鋼板。今年1月に自動車ドアパネルとして国内で初めて採用されており、フードパネルへの採用はそれに続くもの。外板パネル部品では軽量化を目的にアルミ部材の採用が広がっているほか、樹脂パネルの開発も進んでおり、同社では同用途におけるユニハイテンのさらなる適用拡大を推進する。
これ以外にも住友金属工業がマツダと共同で1800メガパスカル級ハイテンによるバンパービームを新たに実用化するなど、車体軽量化の取り組みにおいて着実にハイテンの利用が進展している。炭素繊維強化樹脂(CFRP)など競合素材の研究開発が進むなか、鉄鋼各社では鋼材のさらなる可能性を追求することで自動車産業の発展に貢献していく。

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