再成長するタイの自動車産業

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 リーマン・ショックをくぐり抜け、再び力強い成長を始めたタイの自動車産業。数年後には年産250万台規模へ市場が拡大し、世界トップ10に食い込むと見込まれる。素材メーカーから部品メーカーにいたる日系の自動車関連企業も、増産対応に追われるなど活況を呈している。ただ、この成長がいつまで続くのかどの企業も見通せていない。自動車の小型化、低価格化ニーズが一段と高まり、コスト競争が激化していることも各企業の不安材料となっている。グローバルな市場争いが熾烈さを増すなかで、タイが「最適拠点」であり続けるかどうかは、日系自動車メーカーの新たな拠点戦略にゆだねられている。

 日系の自動車が市場の9割を支配するタイ。そのタイで各社の増産計画が相次いでいる。前年並みの100万台程度とみられていた10年の自動車生産台数は、予想を上回る需要増により一気に160万台を突破。さらに今後数年間は、2ケタの成長を続けると予想されている。
 タイでは高炉を例外にすれば、すでに完成車メーカーから部品、部材メーカー、素材メーカーにいたる自動車産業のピラミッド構造が完成している。このため、完成車メーカーの増産計画は、直ちに周辺産業の増産計画に波及する。しかし、「現在進めている増産計画がタイでの最後の投資になるかもしれない」(大手部品メーカー)と、周辺企業の反応は冷静だ。
 日系自動車メーカーの増産計画は、14年ごろ発売の新モデルまで。その後は、どの国で新たな自動車工場を立ち上げるのか明らかにされていない。ピラミッド構造が整ったタイは最適拠点の1つとして、15年以降も新工場建設の有力候補といえる。ただ、東南アジアで最大の人口を抱えるインドネシアや、「中国の次」として重要性が高まるインドでの大規模増産など、新たな最適拠点を模索する動きは激しさを増している。
 自動車市場の成長の中心が、ますます安価な小型車に移っていることも不安材料だ。日系自動車メーカーは、成長する新興国市場でシェアを獲得するため、排気量1000CCクラスで価格の安い新たな小型車の開発を進めている。ある樹脂加工部品のタイ拠点は、新車開発に向け「自動車メーカーから、3-5割のコストダウンを打診されている」と打ち明ける。
 それでもタイが、アジアの自動車生産の中心地として将来も拡大を続ける可能性はある。その鍵となりそうなのが「鉄」だ。東南アジア諸国には現在、鉄鋼の製造装置である高炉が1つもない。中国が大幅な余剰能力を抱えていることや、どの国も鉄の国内需要が高炉を建設するほどには達していないことなどが背景だ。ただ、将来、東南アジア域内に高炉が建設されれば、その国が自動車生産拠点としても圧倒的な優位性を持つとみられている。
 こうした、アジアのなかでの拠点争いの議論の一方で、国内での産業空洞化の懸念も高まっている。マーチの供給拠点を全量タイ拠点に移した日産グループの動きは、今後ますます広がっていくと予想されている。かつて、家電製品の生産拠点がアジアのなかで次々と変遷し、これと並行して国内生産が衰退し、周辺産業も疲弊化した日本。自動車産業がその轍を踏まない戦略をいかに構築するのか注目される。

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このページは、web staffが2011年2月23日 17:09に書いたブログ記事です。

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