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2016年11月15日 前へ 前へ次へ 次へ

<人と話題>カネカ 執行役員/再生・細胞医療プロジェクトリーダー 上田 恭義 氏

 【デバイス・装置に加えて細胞製剤の開発を加速】

 「実用化」でトップランナーに

 「日本は基礎研究では優れている半面、実用化が遅れている。この現状を打開したい」―。再生・細胞医療関連事業の育成に力を注いでいるカネカは、4月に独立部門として「再生・細胞医療プロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトリーダーとして新規事業を牽引するのが上田恭義執行役員。デバイス・装置のラインアップを進め、並行してアカデミアとの連携を通じて細胞製剤化に取り組んでおり、「実用化で頼りにされるカネカ」を目指している。
 再生医療を取り巻く国内の状況は2013年以降の法改正で大きく変化してきた。薬事法も改正され、安全性の確認と有効性の推定を前提とする再生医療等製品の早期承認制度が導入されたことを受け、カネカは細胞そのものへのアプローチを強めている。「従来はデバイスの開発・販売を推進してきた。今後はこれに細胞調製業や細胞製剤製造販売業を加えて、難病に苦しむ患者様のために貢献したい」方針。
 細胞調製施設(CPC)も完成し、まずは羊膜MSC(間葉系幹細胞)の特徴が最も活かせる炎症性疾患での細胞製剤の開発に力を注いでおり、協業するアカデミアでの治験準備も着々と進んでいる。並行して、羊膜MSCの適応領域拡大も狙っている。より重度な病態の治療に向けては、iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来臓器細胞の研究開発も進めている。
 また難治性疾患治療のための革新的医薬品を効率的に開発する新薬探索技術として、iPS細胞を活用した創薬関連技術などの差別化力ある技術の確立にも、アカデミアと連携して取り組んでいる。
 カネカのグループ会社であるバイオマスター社が経営するセルポートクリニック横浜では、自治医科大学医学部形成外科学の吉村浩太郎教授が東京大学医学部附属病院形成外科時代に開発した脂肪MSCを活用した乳房再建術を提供している。現在、カネカの自動細胞培養装置を活用した、患者負担の少ない新しい術式を考案し臨床研究中。形成外科分野への応用展開も期待している。
 カネカが再生・細胞医療分野に乗り出した背景には、30年ほど前から手掛ける血液浄化システムで培った選択的分離技術がある。「細胞分離に応用できる可能性に加え、閉鎖系システムにより汚染の心配がないデバイスが開発できる可能性」を探り研究開発を進め、骨髄のMSCを分離するデバイスを生み出した。数十枚の不織布を充填したカラムに骨髄液を通し、安全・簡便かつ効率よくMSCを分離するデバイス。この知見を応用して臍帯血有核細胞分離デバイスも開発した。
 さらに細胞の播種から培地交換、画像取得、細胞回収までを自動で行う細胞培養装置、細胞を濃縮・洗浄し回収するシステムなどを次々に送り出している。
 目標は「世界標準となる『細胞』『デバイス・装置』の実用化トップランナー」。神戸市のポートアイランドを拠点に、プロジェクトチームの取り組みが続いている。

 (聞き手=白石孝祐)


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