CO2排出削減ニーズの高まりは、生産プロセスの効率化やライフサイクルアセスメントを観点とした原材料の見直しにまで及び始めている。プラスチックについては原料の脱石油化を目的にバイオプラスチックの開発が世界的に進められており、2008年の原油高騰時には「瞬間的にコストが逆転する可能性があった」(栃岡孝宏主幹研究員)こともあり、原料の安定調達の観点からも取り組みに拍車がかかっている。
ポリ乳酸(PLA)は量産化されている数少ないバイオプラスチックであり、自動車用途でもケナフ繊維とPLAの圧縮成形品が実用化されている。しかし、既存のPLAは衝撃強度や耐熱性が低く、また結晶化速度も既存のプラスチックに比べて遅いため射出成形に適応させることが難しいといった実用上の課題を抱えている。このため自動車用途において幅広く使用するためには物性の改良が不可欠だ。
マツダは物性改良のためにPLA共重合体の結晶化促進剤と衝撃強度の向上を目的に柔軟性ポリマーを高度に分散させる相容化剤を新たに開発。これら添加剤をPLAに混合することで「80%以上の植物度を維持しつつ射出成形可能」なバイオプラスチックを実用化している。新PLAは耐衝撃性が従来の3キロジュール/平方メートルから13キロジュール/平方メートルへと4倍以上向上しているほか、耐熱性も60度Cから100度Cへと実用レベルを確保。また射出成形性についても金型温度を100?120度Cとすることで従来比5分の1という短縮化を達成している。
リサイクル技術についても、既存の石油由来プラスチックと同様のサーマルおよびマテリアルリサイクルはもちろんのこと、ケミカルリサイクルで再びPLAに戻すための新分解酵素も開発している。物性向上によりインパネ下部のアンダーカバーをはじめセンターコンソールやフロントコンソールなどを射出成形法によりPLAで製造することが可能だ。
また、同社ではPLA共重合体の開発技術をベースに、原料樹脂全体の分子構造を制御することで繊維強度を高めることに成功。これによりシート表皮などへの適用が可能な耐摩耗性や耐光性を有する100%植物由来繊維を用いたバイオファブリックも開発している。長年蓄積した表面処理技術により難燃性などの品質性能を確保することで実用化を果たしており、すでに「プレマシーハイドロジェンREハイブリッドではシートやドアトリムに採用している」。
現在では、食糧と競合しない未利用バイオマスを原料としたバイオプラスチックの開発にも着手しており、13年を目標にセルロース系バイオマスから自動車用途で最も使用範囲が広いポリプロピレンなどを製造する技術を開発する計画だ。
すでに各自動車メーカーともバイオプラスチックの採用を積極化しており、技術開発の進展を背景に急速にバイオ化が進むことが予想される。

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