ホンダは、大幅な効率化を可能とする自動車の新防錆処理技術を開発した。加温型チクソ剤を添加した粘度調整型高浸透ワックスの開発により実現したもの。同ワックスは60度Cの加熱で流動性が高まる一方、冷却により網目状の構造体を形成するため再加熱しても液ダレすることがないのが特徴。既存の生産ラインに導入が可能なほか、作業員の熟練度によらない確実な塗布作業を実現している。同社では、欧州向け08年モデルから適用している。
温暖化の影響による積雪量の減少から、融雪剤として塩の使用が拡大傾向にあり、寒冷地では防錆性能が自動車品質の主要項目となっている。防錆性能の要求品質としては1976年のカナダコード(1・5年で外観錆なし、5年で穴あき錆なし)や2000年のノルディックコード(5年で外観錆なし、10年で穴あき錆なし)などがあり、近年では欧州市場で販売される自動車のボディー穴あき錆保証期間を12年に設定する自動車メーカーが増えている。
自動車メーカーでは、サイドシルやホイールアーチなど塗装できない板合わせ部に防錆ワックスを塗布することで防錆性能の向上を図っている。しかし、一般的にワックス塗布のための専用ラインが必要となるほか、「液ダレ対応のための作業が増える」(本田技術研究所 清水靖久研究員)といった課題があり、低コストかつ優れた生産性を有する技術の開発が求められている。
新開発の粘度調整型防錆ワックスは加温型チクソ剤を添加し、フィラーや低粘度性乾性油などを最適配合したもの。同チクソ剤は特定の温度まで加温することで溶解する一方、常温に戻る段階で構造体を形成する特性をもつ。その特性を活用して新型ワックスは60度Cの加熱により粘度を1000mPa秒まで下げるとともに、常温への冷却により5000mPa秒を維持するように設計しているのが特徴。市場の12年間を想定した耐久走行試験において穴あき錆が発生していないことを確認している。
同社ではワックスを3方向に吐出するノズルなどを採用した専用の長尺ノズルを開発するとともに、ノズル先端がサイドシル奥の板合わせ部まで入るよう骨格鋼板の穴位置を最適化することで作業員の熟練度によらず確実な塗布作業を実現。新型ワックスは無溶剤型のため専用塗布ブースが不要で、部分的な加熱装置の追加により現有の乾燥炉で対応でき、「日本および欧州の生産拠点でワックス塗布工程のない既存ラインに導入している」。
同社では、今後も材料開発を通じて生産性向上および製造コストの低減化に取り組んでいく。

コメントする