自動車高度化担う材料技術・ホンダ(下)ピストン用の鍛造アルミ合金

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 資源やエネルギーを投入し、さまざま工程を経て商品を生み出す生産活動。そこでの省エネ・省資源化は、事業の競争力向上にも直結する重要課題だ。こうした分野においても材料技術を応用した取り組みが行われている。

 「微細針状化合物分散強化による軽量鍛造ピストン用材料」は、燃費向上やエミッション低減といったエンジンの高効率化を目的に開発した鍛造用アルミ合金。鍛造品は鋳造品に対して強度に優れるが「250度C以上の温度領域では金属組織内の析出物の肥大化により強度が低下する」(技術開発室 第3ブロック 岡知生主任研究員)。しかし、新合金は8マイクロメートルの針状金属間化合物を均一分散することでピストン天井部の温度領域(250度C?350度C)における強度向上を図り、ピストンの薄肉化およびそれによる軽量化を可能としている。
 また、特性向上と同時に生産段階における大幅な環境負荷削減を実現しているのが新合金の特徴。アルミ再生塊の使用を可能とするなど鍛造材料の製造段階でのCO2排出量を大幅に低減するとともに、寸法精度の確保を理由に2?3プレスを要していた鍛造工程を鍛造特性の向上により1プレスとすることで成形工程のエネルギー投入量の削減を図っている。
 開発に当たっては、従来材と同等の加工性および比重を維持しつつピストン重量を10%、天井肉厚を20%減らすとともに、高温強度を200度Cで10%以上、300度Cで20%以上向上することを数値目標として設定。同時にCO2排出量低減の観点から「1ヒート1プレスでニアネットシェイプを可能とすることと再生塊の使用を可能とすること」(同)を前提に開発を進めた。
 高温強度の強化機構として採用した針状金属間化合物による分散強化では、化合物の晶出自体はニッケルのみでも可能だが「再生塊に含まれる鉄分を考慮して」(同)ニッケル2%、鉄0・6%とする合金成分を選択。また、鍛造用ビレットの製造については富山合金が開発した断熱黒鉛型連続鋳造製法を採用した。「従来の金型を用いた連続鋳造法では、金型接触面から冷却が開始するため組織が粗くなる」(同)のに対し、断熱黒鉛型は材料を直接冷却水で急冷でき組織の均一微細化が可能なためだ。
 開発合金は再生塊の使用比率が約50%で、高温強度は200度Cで80メガパスカル(従来比10%増)、300度Cで40メガパスカル(同50%増)と目標を上回る特性を実現。とくにクリープ強度については2倍へ大幅に向上している。また、鍛造前の押出工程が不要となるなど成形工程の効率化と、アルミ再生塊の利用により材料製造時のCO2排出量削減を達成した。
 新材料による鍛造ピストンは従来比5%以上の軽量化を達成しており、搭載されたCBR1000RR(08年モデル)やCFR450R(09年モデル)においては従来と同等以下の重量でエンジンの高出力化に寄与している。現状では数量が限られることからコスト削減効果は出ていないが「新材料開発により理論的には鍛造ピストンのコストを鋳造並みに下げることは可能」(同)。また、1プレス成形により鍛造ラインの投資額も大幅に抑えられると言う。
 今後、4輪車などへの適用拡大により製造コストおよび生産段階の環境負荷削減が見込まれる。

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このページは、web staffが2009年7月15日 17:11に書いたブログ記事です。

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