今年4月、中国・上海で開催されたモーターショーに1台の自動車が出品された。スズキが世界戦略車として開発した新型アルトだ。排気量998ccの新型車の特徴は、ハイブリッドシステムはもとより排気可変バルブといった特別な機構を用いずにCO2排出量を1キロメートル当たり103グラム(MT車)とAセグメント車トップレベルの環境性能を実現したこと。低価格と高い環境性能からすでに発売しているインドと欧州での売り上げは好調で、生産拠点のマネサール工場(インド)ではフル操業となっている。上海モーターショーの出品は満を持しての世界最大の自動車市場・中国への投入だ。
欧州および新興国向けに開発されたアルト(インド名・A?Star)のコンセプトは、欧州の排ガス規制ユーロ5をクリアしつつ低コスト・低燃費化を実現すること。また、生産は立ち上げから量産までをマルチ・スズキ社(インド)で行うことを前提としている。日本にマザー工場を置かないという同社初の試みを実現するため、開発では「新機構・新材料は使わない」(4輪技術本部 濱田茂明第4カーライン長)で性能向上および低コスト化をいかに進めるかがポイントとなった。
4人乗りの新型アルトは全長3500×全幅1600×全高1400ミリメートルでホイールベースは2360ミリメートル。前輪駆動で直列3気筒(排気量998cc)のガソリンエンジンを搭載。変速機は5速手動変速機でブレーキは前にベンチレーテッド式のディスクブレーキを、後ろにドラムブレーキを採用している。
低燃費化のために取り組んだのが車体軽量化。カルタスで搭載した1リッターの3気筒エンジンをアルミ合金化することで12?13キログラムを減量。また、リアサイドガラスを嵌め殺しにするなど細かな工夫を積み上げることで、従来設計では同クラスで900キログラムが限界だった車重を860キログラムまで軽くすることに成功した。
ただし、軽量化に効果のある高張力鋼板(ハイテン)の使用については車体重量の40%にとどめている。「インドでの現地調達や成形加工が難しい」(同)ためで採用鋼種も340メガパスカル、440メガパスカル、590メガパスカルと低強度のものがほとんどだ。
燃費向上については、繰り返し行った風洞実験の結果をもとに空気抵抗の低減に取り組んだ。車体後方の形状を絞り込んだほか、車体裏面にアンダースポイラーを取り付けるなどの改良を施すことで3%の燃費向上を実現した。また、減速時の燃料噴射を抑制するなどコンピューター制御によるエンジン特性のチューニングやブレーキの引き吊りを抑えるためにパッドを含めたメカニズムを見直すなどの取り組みを行っている。
インドでは昨年10月に生産を開始。11月から発売するとともに、欧州でも今年3月に開催されたジュネーブモーターショーに出品し、この春から販売を開始している。中国での発売はこれに続くもので、今年8月から本格量産化を開始する。

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