構造部材にからんだ騒音・振動(NV)対策でも、インサイトは新開発の素材を採用した。ピラーセパレーター(ピラーフィラー)と呼ぶオレフィン系発泡樹脂で、サイドシル部やピラー空洞部分の根元にこの発泡樹脂を充填し、ピラー上部への空気伝播音を遮断するほか、ピラー内の共鳴音(ロードノイズ中周波音)などを抑制する。インサイトでは、新たに高発泡・低温発泡タイプの超軽量ピラーセパレーターを採用し、従来品の3分の1という大幅な軽量化を達成した。さらに、発泡温度が下がったことで品質が安定化し、塗装工程の温度の低下にも対応できるようになった。
ピラーセパレーターは、ボディ生産工程の溶接区で発泡前の状態で充填し、化成区のED乾燥炉の高温条件(熱)で自然に発泡固化する。「発泡固化した樹脂がカベの役目を果たし、ロードノイズなどをカットする」(矢羽々隆憲研究員)。従来、ピラーセパレーターは組立ラインのなかで手作業によりスポンジ状の部材を組み込んでいたが、化成区の熱で自然に発泡するタイプを導入したことにより、作業性が大幅に向上した。
従来のエチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)製の発泡樹脂は、発泡倍率が約5倍だったが、インサイトで採用した新たな発泡樹脂は発泡倍率を16倍まで高め、比重を3分の1まで引き下げて大幅な軽量化を達成した。材料そのもののコストは上がったが、発泡倍率が上がったため使用量が減少し、結果的にコストダウンも達成した。
さらに、発泡温度は従来の170度C程度から150度Cまで引き下げた。従来の発泡樹脂では化成区の温度(180度C)と、樹脂の発泡温度が接近しているため、部位によっては条件温度まで十分達しないなど温度のバラツキの影響を受けやすいという問題があった。「新規に採用した発泡樹脂は、発泡温度を引き下げることよって、セパレーターとして安定した性能を引き出すとともに、現在、世界的な傾向である化成区の温度の低下という流れにも対応できた」(矢羽々研究員)。
この新しいピラーセパレーターは、ホンダと、接着剤の世界的大手である独ヘンケルの子会社であるセメダインヘンケルが共同開発したもの。「ベースとなる樹脂の改良に加え、発泡剤の処方を見直すことで、幅広い温度に対応した発泡性能が引き出せた」(セメダインヘンケルの塩嵜範康開発部製品開発グループマネージャー)という。
ホンダでは、軽量化とコストダウンを同時に達成したこのピラーセパレーター技術について今後、日本だけでなくグローバルに展開する生産拠点で採用していく考えだ。(特別取材班)

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