ホンダは新型インサイトで、コンパクトクラスとして初めて遮音機能と赤外線(IR)カット機能を併せ持つフロントガラスを採用した。コスト面の制約から、これまでは一部の高級車種などでしか使われていなかった。インサイト開発チームは、この高機能合わせガラスがさまざまな音に対して遮音効果を発揮することに加え、IRカットにより夏場の実用燃費に貢献するなど、新型HVであるインサイトの価値・品質を高める点を評価して採用を決断した。1つの素材・部材が多数の機能を発揮することで、結果的にはコスト面でも優位と認められる典型的なケースといえそうだ。
採用した高機能合わせガラスは、積水化学工業の高機能合わせガラス中間膜を使った旭硝子製の合わせガラス。遮音機能としては1キロヘルツ以上の高周波の領域で約3・0デシベルの効果を持ち、アイドルストップ時の静粛性向上に加え、ホンダのハイブリッドシステム(IMA)関連のノイズや、エンジン音、ロードノイズ、風きり音、雨天時の雨音、さらにはワイパーの作動音など、人間がノイズと感じるさまざまな音に効果がある。
インサイトは、信号待ちなどで停車すると自動的にエンジンを切るアイドルストップ機能が搭載されている。「アイドルストップ時にはクルマが静かな分、外界の音が気になる。インサイトはとくにHVとして"シュン"とした静粛性、従来にない質感を出したかった」(大萱真吾主任研究員)。
また、IRカットによる遮熱機能としては、昼間のエアコン使用時にエアコン負荷を55ワット低減させ、リッター当たり約0・3キロメートルの燃費向上(10・15モード、外気温40度C、日射条件930ワット/平方メートル)が期待できるという。IRカットにより、太陽光線のジリジリ感も低減する。「遮音・IRカットガラスは、採用してもまったく重量を増やさずに複数の機能を発揮する。さらに、夏場のエアコン使用時には、大幅な車両軽量化に匹敵する省エネ効果をもたらしていることになる」(同)。
ホンダの材料系開発陣は、1つの材料で複数の機能を発揮するなど優れた効果を持つため、コストをかけても採用するものを『大玉』と呼び、新型インサイトの場合はこの遮音・IRカットガラスが大玉だという。
合わせガラスの遮音・IRカット機能は、世界で積水化学だけが生産しているポリビニルブチラール(PVB)樹脂を基材とした高機能中間膜によるもの。全部で5層という多層押出技術により、膜の中層に音エネルギーを吸収する層や着色層を持たせ、さらに膜中に遮熱微粒子を均一分散させることで遮音機能を付与した。積水化学・高機能プラスチックカンパニーの加藤敬太中間膜事業部長は「透明性を確保したうえで微粒子を均一分散させるのが技術のポイント。従来の安全機能や遮音機能に加え、遮熱機能が軽量化に匹敵する環境貢献につながることをアピールしていきたい」と語る。
遮音・IRカットガラスは、インサイトのベーシックモデルをはじめとする全グレードに採用している。「グレードにかかわらず基本技術を同じにした」(大萱主任研究員)とのコメントのなかに、ホンダのインサイトに対する姿勢を垣間見ることができる。(特別取材班)

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