"09年はハイブリッド自動車(HV)の本格的な普及元年"とされる自動車業界。その先陣を切り、ホンダが2月9日に市場投入したHVの新型『INSIGHT』(インサイト)は、関係者が固唾を呑んで見守るなかで好調な販売を記録している。インサイトの開発にあたり、車体材料、パワープラント材料および騒音・振動(NV)対策を統括した四輪開発センターの大萱真吾主任研究員は、「徹底した軽量化やコストダウンに加え、ハイブリッド専用車としてワンクラス上の快適性を追求した。このため、今まで使ってきた技術をもう一度考え直し煮詰めた」と語る。
インサイトは、「地球環境に貢献するHVを多くのユーザーに提供したい」というホンダのコンセプトを具現化するため開発された、コンパクトでスタイリッシュなHV専用車だ。発売前は、ベーシックモデルのGタイプの価格が189万円と、HV初の200万円を切る価格設定が話題を集めたが、販売好調の理由は価格だけではない。
HVは、燃費の良いクルマという経済合理性のほか、地球環境への配慮に対する高感度やハイブリッドシステムの先進性などが相まって"ワクワク感"や"新しさ"に溢れる新世代のクルマだ。とくにHV専用車は、ガソリン車など既存のクルマを古臭く感じさせる存在感を持っている。新型インサイトの登場により、HV専用車は一段と消費者から高い注目を集めるようになっており、世界の自動車販売に急ブレーキがかかるなかでHV普及元年の火付け役となりそうだ。
インサイトの燃費性能(カタログ値)は、1300ccのガソリンエンジンとこれをアシストするコンパクトなモーターにより、JC08モードで26・0キロメートル、10?15モードで同30・0キロメートルを誇る。ハイブリッドシステム以外にも、「開発当初から1200キログラム以下の目標が設定された」という徹底した軽量化や、量産5人乗り乗用車として世界トップクラスの空力ボディの採用も燃費向上に大きく貢献している。
このうち軽量化については、既存車の技術をベースとしながらも部品ごとに徹底的に見直された。従来品に対し50%も軽量化を達成したケースもあるが、あらゆる部品で文字通りグラム単位のダイエットが検討されたようだ。「まずは軽量化が至上命題だった。この車格で1200キログラムはHVでなかったとしても軽量な部類だ」(大萱主任研究員)。
ボディ全長を長めに設計することも軽量化とコストダウンに貢献するという。「4390ミリメートルという長さに意味がある。世界各国の厳しい安全基準をクリアするためにしっかり長さをとった。あとで補強する必要がないので結局、軽くて安くなる」(大萱主任研究員)。
NV対策など快適性の向上では、化学系素材技術が力を発揮した。樹脂・ゴムの使用量は、重量ベースで全体の16・5%程度と、ホンダが06年以降発売した小型乗用車と同等レベルとしているが、オール樹脂化したインテークマニホールドや、より軽量化したり発泡倍率を高めた遮音材などの新技術を投入している。また、通常は高級車にしか採用しない遮音・遮熱機能を併せ持った合わせガラスは、快適性の向上に加え、軽量化と燃費向上にも貢献しているという。
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化学工業日報では、新時代の幕開けを告げるインサイトの材料技術について、開発に携わった四輪開発センターの4人の研究員へのインタビューと材料供給メーカーへの取材をもとに、次回からは自動車・機能材料面で、同車が採用した化学系素材について連載で紹介する。(特別取材班)

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