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原油価格急落 米石化復活のシナリオ(下)
新たな可能性を開く
米石化の今後を占ううえでは、原油価格の下落が、単に天然ガスとの競争関係を変えただけではないことも認識しておく必要がある。
*投資意欲落ちる*
米商務省がまとめている、民間設備投資の先行指標とされる航空機を除く非国防資本財の受注額をみると、原油価格の動きをなぞるように、昨年半ばを境に減少に転じた。シェール関連企業の投資抑制が背景にあることはいうまでもない。
米国経済は、これまで、エネルギーからの収益が投資に回ることで好循環を実現してきた。原油安を受け、すでに製造業の景況感は悪化しており、ISM製造業景況指数は14年10月の59%をピークに毎月下落している。3月は51・5%と、景気の拡大・後退の分岐点とされる50%が近づいてきた。3月には雇用統計も大幅に伸びが鈍化した。
欧米経済は長期低迷から脱しきれず、中国をはじめとする新興国の成長が鈍化するなかにあって、米国は唯一の世界経済の牽引役となっていた。その足踏みは、世界経済全体に波及し、米石化が期待する新興国での需要拡大にも影響を与えかねない。
*個人消費おう盛*
しかし、原油価格の下落はマイナスばかりではない。とくに車社会である米国では燃料代の軽減が与える影響が大きい。「通勤に使う車のガソリン代が週40ドルと半分近くになった」(大手商社)。米国は、国内総生産(GDP)の7割を個人消費が担う消費大国。浮いた燃料代は他の消費に回る。その1つとして、自宅の改装用に塗料の需要が爆発的に拡大しているという。自動車も大型車が売れるようになってきた。
個人消費の力強さは統計上も明らかで、消費マインドを示す信頼感指数は13年来の上昇傾向を継ぎ、15年になって100を超えた。マクロレベルでは、これまで上流への投資が果たしてきた経済のリード役を、個人消費がどこまで担えるかが大きな焦点となる。
*建設費増歯止め*
原油安は天然ガスの競争力をテコとした米石化の収益力を浸食したが、その一方で開けてきた可能性もある。設備投資の後退によって、これまで新規プロジェクトの推進にとって最大の課題となっていた建設コストの高騰に歯止めがかかりつつある。また石油化学製品にとっては、綿や紙、ガラス、鉄などの、プラスチックと競合する素材からの代替需要は、これまでより取り込みやすくなった。
石化産業にとって、市況変動はいわば宿命。そのなかにあっても、ビジネスチャンスを捉え、自ら進路を定めていかなければならない。パーティーは終わらないと語ったシェブロン・フィリップス・ケミカルのセラ社長は、スピーチをこう締めくくった。「われわれは踊り続ける」。
(了)
【写真説明】原油価格急落によって開けてきた可能性もある(ヒューストンの街並み)