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試薬が大活躍した透明マウス
「怪物! 怪物でなくて、なんだろう? 科学が発達した今の世の中に、東洋の忍術使いじゃあるまいし、姿がみえない人間がいるなんて」。H・G・ウエルズの小説『透明人間』の書き出しだ。グリッフィンという男がある夜、長年かけて調合した薬を飲み続けると全身が透明になった。この小説が発表されたのは1897年のこと▼それから120年。透明なマウスが、フィクションではなく現実世界に登場した。理研と東大の研究チームが、マウスを丸ごと透明化し、1細胞解像度で観察する新技術を開発した。ニュース画像を見て驚いた人も多かったはずだ。研究チームはこれまでに、マウスの脳の透明化に成功していた▼このときに使っていた透明化試薬に含まれるアミノアルコールが、血液中に含まれる生体色素「ヘム」を溶出し組織の脱色化を促すことを突き止めた。この試薬を希釈し全身に循環させ、さらに特定の手順を踏み、マウスの丸ごと透明化に成功した。「個体レベルのシステム生物学」の実現に一歩近づく成果だという▼これは試薬大活躍の事例である。試薬は、iPS細胞やクロスカップリングなどノーベル賞級の研究成果でも、大きな貢献を果たしていることで知られる。最先端研究の立役者としての試薬。その存在を強くアピールしたのが今回の成果だ。