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製造業復活に必要な戦うマザー工場
日本経済再生に向けて強い製造業の復活は絶対条件である。そのためにコストを含め現場の競争力が課題になるが、競合する新興国の人件費上昇は追い風になろう。並行して技術開発に始まり、材料、部品から製品までのバリューチェーンの再構築を進める必要がある。IT(情報技術)と製造技術の融合を目指したドイツの「インダストリー4・0」も参考となろう。新たな挑戦を期待したい。
日本の製造業が競争力を喪失したのは、円高や高いエネルギーコストなどが重なったことが一因だ。「アベノミクス」効果で円高は解消されたが、生産拠点を海外に移し国内設備を削減したことで、円安下でも輸出は増えない。ただ、モノ作りを長年研究してきた東京大学の藤本隆宏教授は、円高以上に新興国との人件費の差が日本の競争力を低下させたと分析する。
このような厳しい環境下でも、モノ作り現場は「必死でコスト削減、品質改善に取り組んできた」と評価する。中国の人件費は急騰し、日本のハンディは軽減されつつある。他の途上国との人件費の差も徐々に縮小して、日本のモノ作り産業が再生する条件は整いつつあると指摘する。その象徴として、構造不況産業と呼ばれてきた造船業の復活を挙げる。
日本経済の再生はモノ作り産業抜きには実現できない。これを支えるのは高い競争力を維持してきた現場力と、材料から最終製品までのバリューチェーンによる総合力の活用が不可欠だ。リーマン・ショック後の経済停滞でバリューチェーンは傷つき、最近では人手不足で優秀な人材を確保できないなど、製造現場の悩みは深まっている。高コスト構造の課題は残るが、それでも厳しい環境に耐えた現場力を武器に、海外企業と勝負できる基盤は残っている。
この現場力を重視して、モノ作り産業が復活するために参考したいのがドイツの取り組みだろう。自動車を中心に機械工業の競争力、産業のすそ野を支える中小企業が数多く存在する一方で、エネルギーや人件費の高さなど日本との共通点も多い。そのドイツが進めているのが、第4次産業革命と称する「インダストリー4・0」だ。ITと製造技術の融合によって設計、生産計画、生産、物流の効率化を実現するとともに、少量生産にも柔軟に対応することで多様化する顧客ニーズを充たす。
日本では技術開発を自前で行う傾向が強い。大学や公的研究機関も活用したオープンイノベーションで世界を視野に入れた競争力、スピード力が問われる。その際に日本の製造拠点が「戦うマザー工場」として役割を果たさなくてはならない。