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インドネシア製造業 「3重苦」で競争力に陰りも
収益確保に大きな壁
電力値上がり、労働賃金上昇、ルピア安
成長著しい内需や「チャイナリスク」から、日系企業など海外企業の投資先として注目が高まるインドネシア。昨年には前年比22・4%増となる約282億ドルの海外直接投資(FDI)を集めた。しかし、市場からは生産拠点としての競争力に陰りがみえてきたとの見方が増えている。2期10年の長期政権で経済を立て直してきたユドヨノ大統領の後任に決まったジョコ・ウィドド氏の手腕も注目されるところだ。ただ、電力と労働賃金のコスト上昇、急激なルピア安という「3重苦」が顕在化する現状のなか、現地の日系メーカーからは「収益を確保しづらい事業環境になりつつある」との声も上がっている。
◇ ◇ ◇
*IPPなど検討
「導入が急すぎる」-。製造業の反対の声を押し切り、新電力料金体系が5月からスタートした。設備容量が200キロボルトアンペア以上(I3区分)の上場企業を対象に38・9%、3万キロボルトアンペア以上(I4区分)の上場企業に対して64・7%引き上げる内容。I4区分は化学産業が集中しており、日系化学メーカーでは旭硝子のクロルアルカリ拠点であるアサヒマス・ケミカルや三菱化学の高純度テレフタル酸(PTA)拠点が対象となる。とくに電解事業を展開するアサヒマスにとっては収益に直結する死活問題。アサヒマスは独立系発電事業者(IPP)への参入を検討するなど、競争力のある電力ソースの確保を目指している。
現状では内需が旺盛なうえ、多くの化学品は輸入ポジションにあることから、電力料金値上げによる生産への影響は限定的との見方が占めるが、化学各社は「収益が厳しくなる」と口を揃える。導入までの準備期間が短かったことに対して不満が噴出しており、化学や合成樹脂など業界団体が政府に意見書を陳情している。国営電力会社PLNの業績が赤字という状況を踏まえ、産業界も電力値上げについて「総論では賛成」だが、「導入までのプロセスなど各論では反対」と、インドネシア政府の対応に不信感を募らせている。
*高い輸入依存度
PLNが巨額の赤字に陥った原因の1つが急激なルピア安。インドネシアでは石油精製能力が不足しており、石油資源国でありながらもガソリンを輸入に依存している。そのため、この1年間で進行した米ドルに対する約20%もの為替安により、PLNは昨年約25億ドルの赤字を計上した。
一方、為替安は製造業の利益にも大きく影響している。同国産業省によると、自動車、化学、金属加工など主要9分野では原料や資本財などの64%を輸入しており、昨今の為替安よる仕入れコストの上昇で6分野で貿易収支が赤字という。政府は輸入比率を軽減するよう呼びかけているが、素材など裾野産業が育っていない構造のため、早期の解決は難しい状況だ。
今回のルピア安の原因としては巨額の経常赤字、鉱物資源の輸出規制、米国の量的緩和縮小観測による新興国通貨への売り圧力などが挙げられており、国家の財務基盤の脆弱性が改めてクローズアップされている。
*最低賃金2倍に
さらに製造業の業績を圧迫している要因が急激な労働コストの上昇だ。昨年1月にはジャカルタで最低賃金が約40%引き上げられるなど、インドネシア国内ではこの3年で最低賃金が約2倍に上昇。労働集約型の代表であるアパレル産業では、53社がジャカルタ近郊から比較的賃金が安い地方に移転するなどの対策を講じている。
各社が賃上げに踏み切る背景には、労働争議の活発化がある。12年10月には全国で200万人規模のゼネストが発生。これを受け、13年1月にはジャカルタで43%、日系企業が多く進出するブカシやカラワン地区でそれぞれ34%、57%の賃金上昇となった。
インフレ率を上回る急激な賃金上昇率により、国民の購買力が強まった一方で、雇用を抑制する要因にもなっており、インドネシアの労働事情は「魅力的な低コスト」から、「事業活動におけるリスク要因」へと認識が変化しつつある。
(清川聡)
【写真説明】電力や賃金上昇、ルピア安の"3重苦"はインドネシアに進出する日系企業を悩ませている