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2014年06月27日 前へ 前へ次へ 次へ

勝負師の残した名言

 「勝つことは偉いことだ」。将棋の塚田正夫名誉十段の言葉だ。木村義男名人を破り、後に全盛期を築く大山康晴氏の挑戦を退けている。紙一重の差。そういう思いのなかでの言葉であろう。だがその紙一重の優位をいかに身に付けるか。そこには人には見えない自分との戦い、そして精進がある▼21歳で最年少名人となった谷川浩司九段は、ある取材で「一局が終わると勝負師から研究者に頭を切り替えていくことが大切。冷静に負けたことを分析、整理してきちんと心に刻むことが必要」と語っている。25歳にして囲碁界のトップの座にある井山裕太本因坊も「負けたときほど自分の課題が見えやすい。負けを逆に強くなれるチャンスにできるかどうかが大切」と言う▼捕手、強打者として活躍、ヤクルト、阪神、東北楽天の監督を務めた野村克也氏は名言家としても有名だ。そのなかに、松浦静山の剣術書「剣談」を引用した「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」がある。極めて高いレベルでのプロ同士の戦いはこういうものだろう。勝ちには偶然があるかもしれないが、負けは必然しかない▼これは将棋や囲碁、さらにはプロスポーツの世界に限ったことではなかろう。谷川九段も井山本因坊も言う。「負けを次に生かせるか」。さまざまな世界に共通する至言だ。


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