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課題を残す名古屋議定書の国内措置
2010年月に名古屋市で開催された生物多様性第回締約国会議(COP10)から3年以上を経過した。COP10で採択された名古屋議定書に基づく国内措置のあり方の議論は12年9月に始まり、このほど報告書が公表された。残念ながら、これまでの議論が十分に反映されておらず、日本のバイオ関連の学術研究、産業発展を阻害しかねない内容と指摘せざるを得ない。
1993年に発効した生物多様性条約は、(1)生物多様性の保全(2)生物多様性の構成要素の持続可能な利用(3)遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ公平な配分を確認した。この条約の中で、先進国を中心とした遺伝資源の利用国と、途上国が多い提供国間の利害調整を迫られたのが、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)だ。COP10において激しい議論が繰り広げられた。
議長国だった日本の粘り強い会議運営によって(1)遺伝資源に関する主権的権利を確認し、提供国の国内法令で規制することが可能(2)提供国と利用者間での事前の情報に基づく合意(PIC)が必要(3)遺伝資源の利用から生じる利益は相互に合意する条件(MAT)で配分などが92カ国の合意で採択された。
合意された議定書は、50カ国が批准した日から90日後に発効する。現状は提供国側中心に28カ国が批准しているが、今年夏にはEUの批准が予定され、EU加盟国数を考えると50カ国を突破しそうだ。議長国の日本としては議定書の締約を急ぎ、15年までに対応する国内措置の実施を閣議決定している。
国内措置の議論は環境省を中心に検討が行われてきた。ただ、議定書の表現そのもののに曖昧さがあることに加えて、検討会の運営方法に関して環境省と委員の間で認識にそごが生じた。委員からは国内措置の議論に参加できず、「事務局が特定の方向に結論を出すのではないか」と反発が起こった。
環境省は昨年末に「名古屋議定書に係る国内措置のあり方」の報告書を公表、今月中の締め切りでパブリックコメントを募集中である。3月初めには最終報告書をとりまとめ、関係省庁連絡会で立法化も含めて国内措置の議論に移る考えのようだ。
海外でも議定書に基づく国内措置の整備は遅れている。「遺伝資源」や「遺伝資源の利用」などの用語の定義が広すぎて曖昧のまま整理が進んでいない。遺伝資源を活用したバイオ関連の学術研究、産業応用は国益に関する分野であり、成長戦略の中核に位置付けられる。政府は産学の意見をくみ取り、実態を踏まえて方向を提示すべきではないか。