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2013年04月11日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載(上)】オープンイノベーション 研究開発に新たな息吹

事業創出へ外部の力活用新規テーマ探索にも

 新興国の台頭、歯止めがかからない内需縮小を受け、化学・素材メーカーは成長戦略の練り直しを迫られている。とくに大手を中心に汎用品から機能品への事業転換に向けた施策を相次いで打ち出している。こうしたなか、企業の研究開発に新たな息吹を吹き込む存在として注目を集めているのがオープンイノベーションだ。各社の取り組みを追う。(吉水暁)

※自社だけでは限界※
 「今の時代、自社技術だけでは限界がある。新たな事業を立ち上げるには広く世界の力を借りなければならない」。JSRの熊野厚司上席執行役員研究開発部長はオープンイノベーションの意義をこう唱える。同社の成功事例はベルギーの国際研究機関IMECとの共同研究開発で、半導体レジスト材料などで成果を挙げている。半導体材料開発で重要な役割を担う「各種装置へのアクセスが得られたことが大きかった」ほか、顧客層がIMECのプロジェクトに参加していたことで「材料の良し悪しが手に取るように分かった」と振り返る。
 次世代のJSRを担う『タネ』探しにもオープンイノベーションを活用しており、国内の大学との関係構築にも力を注ぐ。2007年には近畿大学のキャンパス内に機能材料リサーチセンターを設置し、電子材料からライフサイエンスまで幅広くテーマを探している。「新しい材料も出てきた」(熊野部長)と手応えを感じており、事業化への道筋もみえつつあるようだ。

※ヘルスケアに関心※
 昭和電工もオープンイノベーションによって新規事業創出に取り組む1社だ。信州大学や東北大学といった国内のアカデミアに限らず、オーストリアの精製ゲルメーカーとも手を握る。研究開発担当の中條哲夫執行役員は「オープンイノベーションを通じ『個性派』化学を体現する」と宣言。有機エレクトロルミネッセンス(EL)やナノ炭素材料のほか、「ヘルスケア関係でも可能性を探りたい」と意気込む。
 独自のオープンイノベーション戦略を繰り広げているのは日本ゼオンだ。同社の方針はスピードや普及を促す場合はオープンにする一方、肝心な部分はクローズする。研究・知的財産担当の荒川公平取締役常務執行役員は「全てをオープンにしたら競争優位性はなくなる」と指摘。事業の性質に応じてオープンにする部分とブラックボックス化する部分を分ける重要性を説く。

※大元の技術は自前※
ゼオン単層CNT.png 例えば新規事業の柱として期待を寄せる単層カーボンナノチューブ(CNT)。産業技術総合研究所、日本ケミコンと始めた共同研究事業「CNTキャパシタ開発プロジェクト」を母体に事業化に着手し、7年近い歳月を経て従来の1000分の1というコストで量産できるプロセスの開発にめどをつけた。また、単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)という産学官連携組織を通じ単層CNTを使いこなすための分散技術や半金分離技術等の基盤技術を産官学連携して構築している。一方「単層CNTについての基本特許、製造特許は独占している。製造設備もブラックボックス化している」(荒川常務)。
 オープンイノベーションという言葉が独り歩きしがちな昨今、荒川常務は「収益をあげるためのビジネスモデルを築くのが先決。そこから逆算して、必要ならばオープンイノベーションを選ぶという姿勢が欠かせない」としている。
(了)
【写真説明】日本ゼオンは産総研などと連携し単層CNT(写真)の事業化を目指す


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