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2013年03月19日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載(2)】問われる保安 岐路に立つ化学産業

[早期通報、情報伝達に課題]
製造現場の体制構築急務

 日本触媒・姫路製造所でアクリル酸貯蔵タンクの爆発事故が起きた直後の10月1日、消防庁は石油連盟や石油化学工業協会、日本化学工業協会の会長宛てに「化学プラントの事故防止等の徹底について」と題した通達を出した。その内容は危険性をともなう化学物質の取り扱いやプラントの運転管理、事故発生時の早期通報、事故対策の計画や訓練の状況について再検証し、不備があれば徹底して見直すよう求める厳しいものだった。

※異常あれば即座に※
大阪市消防局1.jpg 石油コンビナート等災害防止法や消防法などによって異常な現象が発生した時は、直ちに消防機関に通報しなければならないことになっている。しかし、日本触媒の爆発・火災事故では同社によると約30分遅れたという。神崎川事業所(大阪市)で過去に事故を起こした森田化学工業の川澤吉雄執行役員・事業所長は「どんな化学物質がどのような状態でトラブルを起こし、どれほどの危険があるのかなどを詳しく伝えなければならない。現場は鎮圧活動で混乱しているので、とくに人手が足りない中小メーカーは通報が遅くなってしまう側面があるのではないか」と分析する。
 消防庁は「直ちに通報」を大前提に指導を続けている。特殊災害室の係官は「まとめて情報を出そうとせず、状況が把握できていなくても第1報が欲しい。状況が分かれば細かく第2報、第3報を入れてもらえればよい。トラブルを見つけた人が即、通報する。これが基本だ。大事にいたらないような小さな事故案件でも届け出るようにしてほしい」と要望する。

※迅速鎮圧の支障に※
大阪市消防局2.jpg 通報の遅れとともに問題視するのは、通報を受けて隊員が現場に到着しても事故の状況を説明できる企業側の責任者が一向に姿を見せないケースが見受けられることだ。「出動した隊員は本部から化学品の危険情報などの提供を受けながら鎮圧活動にあたるが、現場では安全確保のため再度、工場の関係者に本部から入手した情報の再確認を行って鎮圧活動に入る手順になっている。企業側の責任者が表れないと工場の入口などで待機することになり、迅速な鎮圧活動に支障をきたす」(大阪市消防局幹部)と指摘する。
 姫路市消防局によると、日本触媒の事故では現場で十分な情報確認ができず、工場の自衛消防隊が鎮圧活動をしているのを見て消防隊員がタンクに近づき死傷をともなう惨事となった。消防庁は以前から出動隊員の独自判断による行動は厳しく禁じているが、相次ぐ化学プラントの事故を受けて隊員が独自の判断で行動しないようあらためえて指示を出した。
 化学業界では消防庁からの事故防止徹底の通達を受けて、石油化学17社が新たな保安力評価システムの導入を決めたり、日本化学工業協会がプラントの火災・爆発に関係するガイドライン策定を目指すなど、工場の保安管理の高度化に取り組み始めている。業界はこうした取り組みのなかで早期通報や消防への正確・迅速な危険情報の伝達などの体制づくりに関する議論も深めなければならない。
(了)
【写真説明】事故を最小限に食い止めるためには消防当局への迅速な情報伝達が重要(大阪市消防局が市内の事業所で実施した防災訓練)


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