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2012年12月18日 前へ 前へ次へ 次へ

化学技術の活躍が広がる宇宙産業

 各国で宇宙産業を国家の安全、経済、科学などを担う戦略分野として強化策が進められている。経済効果として、通信放送、ナビゲーションなど宇宙を利用するサービス市場も成長が見込め、新興国向けのパッケージインフラ輸出としての可能性も大きい。わが国でも2008年5月に宇宙基本法を制定、同法に基づいて宇宙政策を総合的、計画的に推進する宇宙基本計画を09年6月に策定、研究開発主導から高い技術力を生かした利用ニーズ主導へ転換した。
 この基本方針は民主党政権も引き継ぎ、日本再生戦略において、宇宙機器の製造から利用サービス産業まで含めた20年の宇宙産業市場を、現状比倍増の20兆円規模に拡大するという目標を掲げた。そして来年早々には、13年から5年間の新たな宇宙基本計画を策定する。
 ロケット、衛星、関連機器など日本の宇宙産業は、官需依存度型構造だったことで、政府予算の縮小のほか、技術開発の費用対効果の悪さが指摘されてきた。関連製造業の撤退など厳しい環境が続いてきたが、戦略的な産業強化に向けて次期基本計画に対する期待は大きい。
 政府は今後の宇宙産業政策の中核に、新興国市場のリプレース需要も見越した中長期的対応のほか、競争力のある部品やコンポーネント産業の育成、技術開発支援を強化する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、産業競争力強化に向けた研究開発の実証ロードマップを提示することにしている。
 次期宇宙基本計画に対しては、産業界の関心も高い。経団連は先月、提言を行ったが、観測衛星、測位衛星、通信・放送衛星、情報収集衛星などを利用した新たなサービス市場の開拓を求めた。さらに安定的なエネルギー供給に向けて宇宙太陽光発電システム、宇宙の無重量環境を活用した医療・創薬などライフサイエンス分野の利用促進にも言及した。
 化学産業にとって、宇宙関連の事業規模は必ずしも大きくない。ロケットや人工衛星に使用している材料は金属系部品が中心で、炭素繊維強化プラスチック、ポリイミドフィルム・複合材料、塗料、接着剤などの高分子や有機材料の採用は限られている。
 材料開発で主導的な役割を担っているJAXAは、性能基準を示し化学企業との共同研究を前向きに進めており、成果も生まれている。宇宙環境で使用する材料は(1)軽量・高強度・高剛性(2)温度、紫外線や放射線などの耐環境性(3)高信頼性、安定性が不可欠だが、加工性やコストも要求される。日本の優れた材料技術で挑戦して、新規事業として育ててもらいたい。


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