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2012年11月15日 前へ 前へ次へ 次へ

国際動向を視野にエネルギー政策を

 東京電力福島第一原子力発電所の事故後、日本のエネルギー政策の混乱が続いている。政策を巡る論議は原発問題に集中し、長期的な視点に立ったエネルギーの安定供給や経済性の確保、地球温暖化対策などへの対応は置き去りにされた感がある。しかしこの間、世界のエネルギーを取り巻く環境は激変しており、この変化への的確な対応を怠ると、将来に禍根を残しかねない。
 原発事故から1年半、日本エネルギー経済研究所の豊田正和理事長はエネルギーを取り巻く5つの変化を指摘する。まず、"アラブの春"やイラン問題などに見られる中東情勢、第2に原発事故を契機にした世界各国の原発政策の見直し、第3に北米などの非在来型資源であるシェールガス・オイルの本格登場、第4に再生可能エネルギーや省エネルギー普及に向けた政策支援の拡大、そして異常気象による災害が世界で相次ぎ、地球温暖化の不安を広げたことだ。
 この問題意識を背景に、エネ研が2012年版のエネルギーアウトルックで提示したのは、「高まるアジア・中東の重要性と相互依存」だ。エネルギー消費は経済成長や人口との関連が大きいが、アジアは世界で最も高い伸びが続く。世界の一次エネルギー消費増加分の6割を占め、このまま推移すると、35年におけるアジアの化石エネルギー比率は90%近くに達すると予測する。一方、石油を中心に化石資源の重要な供給拠点である中東は域内消費が増加して、輸出余力は低下する。
 アジアの対応としては、再生可能エネルギーや原発の新増設で化石資源比率を下げる努力が必要になろう。それでも限界はあり、エネルギー安全保障・環境保全・経済効率と、エネルギーの安全利用という「3EプラスS」に対する着実な取り組みの重要性は高まる。
 このなかでエネルギー資源小国の日本にとって、世界の政治や経済を取り巻く変化を見据えた戦略構築は政策の重点課題の一つである。アジアの化石資源の需要が増加し競合も激しくなるが、アジア諸国との連携強化も必要となる。中東などエネルギー資源の供給国と友好関係を維持しながら、北米やロシアなどガス調達の新ソース確保に向けた努力も不可欠だ。
 このような状況を考えると、原発抜きのエネルギー政策は考えにくい。エネ研では、日本は福島事故の教訓を踏まえ、安全規制の国際標準の策定、安全技術の移転、人材育成などを通じて、原発の安全確保に国際貢献すべきと指摘した。現状のエネルギー政策の議論があまりにも内向きになっていることに対して一石を投じる視点だ。


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