ニュースヘッドライン記事詳細

2012年11月15日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載(下)】苦悩する関西中小企業、手探りの海外展開

[どうするリスク軽減]
同業同士が連合で拠点

※長年の交流決め手※
 「予想もしないことが起こるのは中国に限ったことではない。どこの新興国でもそのリスクを精査せず相手の話を鵜呑みにして丸腰で契約すれば痛い目にあうだろう」。インドや中国のほか東欧や旧ソ連圏などのローカル化学メーカーに太いパイプを持つ専門商社の中間物商事(大阪市)の佃伸五社長はこのように警告する。
 同社は先週、インドで精密化学品の生産合弁社の新設を決定した。インド事業は40年の実績があり、その合弁相手とは20年の付き合いがある。現地駐在事務所には茶道が趣味という親日派のインド人所長を置いている。「新会社の資本金は1億円。当社にとっては大きな投資だ。20年の交流がなかったら決断しなかった」と言い切る。
 日新容器中国合弁.JPG工業用ドラム缶大手の日新容器(大阪市)の中村清一社長は「同業の企業が連合体を組織して海外に工場を建設するのも中小企業が海外進出のリスクを軽減する1つの方法だ」と指摘する。
 同社は2007年、日本ドラム缶更生工業会に所属する企業4社と合弁で中国・天津に使用ずみドラム缶の洗浄再生会社を設立、中国初のドラム缶リサイクル事業に乗り出した。5年が過ぎて事業は軌道に乗りつつあり、「各社が連携することで情報を持ち寄れるし、共同出資により1社当たりの投資金額の圧縮が可能になる」と話す。

※台湾経由して開拓※
 染料を主力とする専門商社の松浦(大阪市)の戦略も中小企業の投資リスクを回避するのに適した方法を取っている。友好関係にある台湾企業とタイアップし、台湾を経由して中国や東南アジア市場の貿易業務に乗り出している。
 同社は04年、中国・上海に販売会社を設立。染料以外の新規事業を開拓しようとしたが、現地の商習慣と合わずに3年後に同法人を日本の中小商社に売却して撤退。現在は台湾事務所を拠点に再度、海外事業の可能性を探っている。発光ダイオード(LED)向け部材を日本に輸入するプロジェクトは軌道に乗っており、新たに光学関連のビジネスも具体化。台湾企業との連携は一定の成果が出ているようだ。

※すべてを日本人で※
 一方、日本の不況を逆手にとって斬新な海外事業を構想する企業もある。タイ、米国のほかマレーシア、インドネシアにコンパウンド工場を保有する樹脂着色剤メーカーのヘキサケミカル(大阪府東大阪市)だ。福井眞彌会長は「日本は不況で人材が余っている。新興国に本社を置きながら従業員はすべて日本人というユニークな色素メーカーの設立を目指している」と意気込む。
 新会社のスタッフには給料は低くても海外で働きたいという化学企業を定年退職した人や、仕事につけない若者を採用。すべての業務を日本人だけでこなすことで高品質と低コストの両立を目指す。福井会長の私案だそうだが、実現すれば日本初の試みとして注目されそうだ。
 ある専門商社の社長が先週、中国への1週間の視察旅行を終えて帰国した。「当社の規模で海外に自社工場を持つ余裕はない。選択肢は現地メーカーへの委託生産だけ。そのための中国企業の視察だったが、相手の説明に不透明な部分が多く、それを考えるとホテルでもほとんど眠れなかった」という。海外展開による現状打開のシナリオをどう描くか。中小化学企業に残された時間は多くはない。(了)


Copyright(c)2010 The Chemical Daily Co., Ltd.