ニュースヘッドライン記事詳細

2012年10月24日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載】安全はすべてに優先 現場力維持・向上のために(上)

現場力維持・向上のために
保安力向上へ評価指標

 大量の危険物を取り扱っている石油化学産業にとって、安全はすべてに優先すべき課題。しかし、この1〜2年は工場の事故が相次ぐ厳しい現実がある。高経年化が進むプラントは保守・改善によって安全性が維持されているが、それを根底で支えている現場力の低下が指摘されている。各社は現場力を維持・向上するため自主管理を強化するとともに、安全レベルを自主評価し見直そうという動きが出ている。各社共通の課題も多く、業界横断的な取り組みが始まっている。
(内野英一郎)
  化学プラントの大規模化が進んでいった1970年代、さまざまな事故が世界で発生した。工場爆発にともなう有害物質の大規模漏洩など重大事故も多く、こうした事故を教訓にプロセス安全の重要性が高まり安全規制が整備された。90年代にはリスクマネジメントが取り入れられ、化学プロセスの安全性は大きく向上した。
 欧米の先進企業は近年、プロセス安全防御とリスクマネジメントだけでは安全成績を高めることができなくなりつつある。このため導入されたのが企業の安全活動のベースとなる安全文化の醸成。組織統率、学習伝承、作業管理、相互理解などを強化することで現場力を高めようとしている。

※若手の理解を深める機会が減少※
 現場力は日本のプロセス産業の安全を支えてきた強みだ。しかし、プラントを熟知する団塊世代が引退しプラントの新設も少なくなったことで、若手がプロセスへの理解を深める機会が減少している。高圧ガス保安協会の資料によると、高圧ガス製造所における事故件数は増加傾向にある。事故は多様な要因がからみあって発生するが、発端の多くは誤操作・誤判断とされている。
 事故の増加を受け、経済産業省の「産業保安分野における安全文化の向上に関する研究会」が提起したのが事業者における安全活動の確認の必要性。経産省の委託を受け安全工学会が06年から5年間、「ヒューマン・ファクターを考慮した事業者の保安力評価に関する調査研究」を行い、プロセス産業の安全基盤と安全文化を評価する「保安力評価法」を開発した。
 11年からは石化企業などが活用できるようにするため、独自に保安力評価法の改定作業に着手。化学企業の現役技術者の協力を得ながら、安全基盤と安全文化の達成を点数化して安全管理レベルを評価するためのレイティングシステム「保安力評価システム」を開発した。化学産業を軸に提供する。

※自主活動の支援や検証・分析も※
 安全工学会は民間の自主活動によって化学プロセス産業の安全レベルを高められるよう「保安力向上センター」を設立する。自主的な保安力評価を支援するとともに、第三者機関として評価結果を検証・分析し、必要に応じてコンサルティングを行う。安全技術者の育成にも力を注ぎ、安全技術者や認定制度を作ることも検討する。
 メンバーは安全工学や化学プロセス、物質安全分野の学識経験者、製造現場や安全文化に精通したシニアエンジニアで構成される。シニアエンジニアが評価員となって第三者検証や現場でのヒアリング調査を行うため、知識や経験の伝承も期待される。大手化学企業から人材派遣の合意を得ており、来年春から本格的に活動を始める。


Copyright(c)2010 The Chemical Daily Co., Ltd.