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2012年10月19日 前へ 前へ次へ 次へ

増えるレジオネラ症に適切な対策を

 国立感染症研究所によると、今年になってレジオネラ症届出件数が増えている。このまま推移すると、過去10年で最多だった2008年と並ぶ勢いだ。
 レジオネラ症の原因菌であるレジオネラ属菌は、環境中に普通に存在する菌であり、通常では感染症を引き起こすことは少ない。しかし、空調設備の冷却塔や温浴施設の浴槽などに混入すると増殖すると言われている。菌を含んだ微細な水滴(エアロゾル)を人が吸入すると、高齢者など抵抗力の少ない人が感染しやすく、感染すると肺炎やポンティアック熱を引き起こす原因となる。1976年に米国在郷軍人会の大会で多数の人が、レジオネラ属菌が原因の肺炎にかかったことから在郷軍人病とも呼ばれている。
 88年にロンドンのBBC放送局の屋上にある冷却塔内のレジオネラ属菌が原因で集団感染した事例も有名だ。日本では冷却塔が原因となった大規模な集団感染は報告されていないが、適切な管理が必要といえよう。冷却塔のレジオネラ属菌の抑制対策には、菌が産生するバイオフィルム(増粘多糖類)の除去と水処理剤による継続的な除菌処理が重要となる。とくにレジオネラ属菌は薬剤が浸透しにくいバイオフィルムの内部で繁殖するため適切に除去しなければならない。
 一方、日本でも感染がしばしば報道されるのが温泉やスパなどの温浴施設だ。一般に温浴施設は、日常の塩素消毒、週1回以上の温浴循環ライン洗浄(10ppmの塩素循環)、年1回の過酸化水素による大規模洗浄が行われている。
 だが、最近の景気低迷で利用者の目に付きにくい個所の衛生管理を怠ったことで、レジオネラ症届出件数が増えているとしたら問題だ。かけ流しでない温泉は怖いという高齢者がいたが、感染の報道が増えるほど全体の利用者数にも影響が出かねない。東京都文京区では09年に公衆浴場のシャワー水を感染源としてレジオネラ肺炎の患者が発生したことで、対策指針・対策事業を実施した結果、年度調査で対象施設すべてのシャワー水で不検出となった。自治体は指導を適切に行っていくことがより求められよう。
 水処理剤メーカーからは、温浴施設向けにレジオネラ属菌に効果のある薬剤やソリューション型のサービスが提供されているが、浴槽水の水質改善には時間と費用がかかるのもネックとなっている。リトマス試験紙のようにだれでも簡単にレジオネラ属菌の有無が測定できるキット方式などが開発できれば感染の防止の一助になるはずだ。関連メーカーのさらなる製品開発を期待したい。


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