【連載】2転換期のASEAN石化産業
持続発展へ次の一手探る
※外資の投資呼び成長※
「エチレン生産能力で年600万ー800万トンを目指す」。シンガポール経済開発庁(EDB)は、シェルとエクソンモービルの新しいナフサクラッカー計画が明らかになった2007年以降、石化産業の拡張目標を明確に打ち出してきた。実際、石油精製と一体化した石化計画を中国石油大手の中国石油(CNPC)や中国石化(SINOPEC)、台湾のフォルモサグループなどが検討した経緯がある。しかし、これらの構想は頓挫し、EDBが描く青写真の具体化への道筋はみえていない。
石化産業の集積するジュロン島。今年末にはエクソンモービルの第2期石化コンプレックスが完成し、エチレン能力は合計400万トン近くに達し世界トップ10の仲間入りを果たす。人口500万人にすぎない都市国家に市場はないものの、世界有数の立地とインフラ、政府からのインセンティブなどを求め各国の投資を誘導してきた。なかでもジュロン島に進出する100社近い企業のうち、最も多い社近くを占める日系企業の存在感は大きい。
※用役コスト高に悲鳴※
その日系企業が悲鳴を上げている。電力など用役コストが高騰しているためだ。とくに電力はインドネシアやマレーシアなどから輸入する天然ガスが燃料となっている。当初、政府は石油精製から副産される利用価値の低い重油を燃料とするスキームを構築し、数年前までは重油が主な燃料に使用されてきた。その後は安い天然ガスに代替されたものの、燃料に使用される天然ガスの価格は重油の価格に応じて変動するシステムが続き、近年の重油高騰を背景に電力コストが高騰。日本と比べても4割以上も高いのが実情だ。
「政府はインセンティブで相殺しようとするが、赤字になってはインセンティブを活用しようがない」。ジュロン島に工場を構える日系化学大手の幹部は頭を悩ませる。一方、これから新たな投資を検討する日系化学大手の幹部は「用役コストが高すぎる。このままでは別の国も候補に検討せざるを得ない」と内実を明かす。
政府は手をこまねいているわけではない。既存の進出企業の競争力を高め、かつ新規進出企業の支援を充実すべく施策策定に懸命になっている。EDBを旗振り役とし、他のインフラを管轄する官庁や進出する企業などと協議を進めているジュロン島の新たな成長戦略「ジュロン・バージョン2・0」がそれだ。具体策は明らかになっていないが、今後の進展に期待が集まっている。
日本とシンガポール両国の国家計画として、東南アジア諸国連合(ASEAN)初のエチレンセンターであるシンガポール石油化学(PCS)が完成・稼働して約40年が経過した。ジュロン島の石化産業がどのように持続的発展を実現するのか、大きなターニングポイントを迎えている。
(了)
【写真説明】外資主導で石化産業が集積されてきたジュロン島(写真)。新成長戦略の進展が期待されている