企業の「知の市場」参加定着を望む
社会の幅広い領域において、様々な機関が多様な要請に応えて総合的、実践的な学習の機会を提供する「知の市場」。運営される公開講座は、大学や学会、専門機関、企業、報道機関、市民団体などの幅広い協力と参画で成り立っており、受講者は自己責任により自由に受講科目を選択できる。近年、開講機関として民間の参加が増えており、社会貢献活動の一環とした企業の取り組みが定着することを期待したい。
「知の市場」は、お茶の水女子大学の増田優教授が2004年度に「化学・生物総合管理の再教育講座」として立ち上げた制度で、09年度に「知の市場」に改称された。10年度は543人の講師が参画し、全国31拠点で82科目が開講、3986人が参加した。年度は全国30拠点で79科目が開講され、東日本大震災の影響があったものの2700人を上回る人が受講。11年度までの8年間で、延べ約1万5000人が受講している。12年度は全国31拠点で76科目の開講が予定されている。
知の市場の理念は、「互学互教」の精神のもと実社会に根差した"知の世界"の構築を目指し、人々が自己研鑽と自己実現のために自立的に行き交い自律的に集う場所と掲げられている。この理念を共有する受講者、講師、開講機関、連携機関・学会などによって構成され、増田教授を責任者とする知の市場事務局が運営している。
当初、公的機関が多かった開講機関は近年、民間も目立ってきた。企業が開講機関となったケースをみると、12年度の前期は武田薬品工業が「医薬品研究開発の戦略とプロセス」、三洋化成工業が「生活を演出する機能化学品(パフォーマンスケミカル)の働き」と題した副題で開講したほか、YKKや日本リファインなども開講した。下期は関東化学が「生活と産業を支える社会インフラとしての試薬」の副題で行う。
関東化学の場合、10月から来年1月にかけて全15回に及ぶ講義を行う予定だ。公開講座の科目となる「試薬論」は知の市場では初めてであり、その分、試薬を広く一般に知ってもらうとともに、同社が試薬事業を通じて、いかに社会貢献しているかを理解してもらう狙いもあるという。
受講料は無料で、かつ企業が開講する場合は時間も夕方から夜にかけてが多く、受講主対象となる社会人や学生に配慮している。企業にとっては半ばボランティア的な活動となるため、社会貢献活動の一環としての位置づけが大きくなる。一方で自社が携わる産業分野の認知度が向上し活性化につながるなど、有効活用する意義は大きい。