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2012年07月26日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載】ジレンマに悩む国内肥料工業(上)

高まる原料調達リスク
JAなど安定確保に動く

 農業生産に不可欠な化学肥料は、世界的にみると人口増大、新興国における経済成長、消費者の食生活の変化などを背景に需要が拡大している。原料も資源エリアが偏在していることから、安定調達リスクが高まり価格が高止まりの状態。こうしたなか、日本の肥料工業は原料を輸入に依存する一方で農業生産の衰退で需要の減少に歯止めがかからない。原料高騰と中長期的な需要減少というジレンマに見舞われている。

※世界需要は拡大・規制に動く資源国※
 農林水産政策研究所によれば、世界における2021年の穀物消費量は現在の21億6400万トンから26億7300万トンに高まり、穀物価格もコムギが1トン当たり233ドルから244ドル、コメが598ドルから610ドル、トウモロコシが173ドルから190ドルに上昇する見通し。こうした動きを受けて肥料需要は拡大し、3要素(窒素、リン酸、カリウム)の消費量は10年の1億7000万トンから14年は1億9000万トンに増加する(国連食糧農業機関予測)とみられる。
 3要素のうち、リン酸、カリウムは資源が存在するエリアが偏在している。輸出国で規制の動きがみられ、肥料需要の成長性と相まって原料価格は高止まりしている。
 例えばリン酸の原料であるリン鉱石は埋蔵量の7割が米国、中国、モロッコに存在している。このうち米国は96年にリン鉱石輸出を全面停止し、中国も輸出関税を引き上げる動きをみせ、資源ナショナリズムが強まりつつある。
 原料価格の高止まりで国内の肥料価格は値上がりしている。JA全農の肥料価格のうち、基準銘柄である高度化成(一般)の価格は10肥料年度春肥(10年11月?11年5月)が前期(秋肥・10年6月?10月)比で1・7%、11年度秋肥が同3・2%、12年度春肥が同4・3%それぞれ値上がりした。12年度秋肥は同0・3%値下がりしたものの、リン酸だけでなくカリウムも山元が値上げを打ち出していることから、中長期的な値上がりが続くとみられる。

※中国企業に出資・商社も鉱山開発へ
 肥料原料を輸入するJA全農や総合商社といった国内業界は、原料の安定確保に向けた動きを強めている。JA全農は4月、中国福建省龍岩市にリン酸質肥料工場を建設する瓮福紫金化工に出資した。出資額は約7億円で、出資比率は10%。JA全農は瓮福グループと年に「戦略的パートナーシップ協定」を締結しており、瓮福紫金化工への出資は協力関係をさらに深め、発展させる具体策と位置づけられる。JAグループは日本国内で長年培った高品質肥料の品質保持のためのノウハウを提供し、瓮福からリン酸肥料を安定的に調達する。総合商社では三菱商事、三井物産がそれぞれペルーのリン鉱石鉱山開発プロジェクトに参画している。
(写真はJA全農と中国側との調印式の様子)


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