コミュニケーションの重要性
「由らしむべし、知らしむべからず」。孔子の論語が原典だが、要約すると「民衆のすべてに施政の方針を理解させることは困難である」(大辞林)となる▼だが、日本では300年近く続いた徳川幕府の封建思想、統治ポリシーとして理解されてきた。明治以降も基本は変わらず、政治と国民の間は「由らせる」、「知らせない」の統治が続いてきたように思う。その状況が崩れたのは、右肩上がりの成長が終わり、失業率の高止まり、格差社会や年金不安が到来して、政治に対する信頼が大きく低下してからだ▼大ヒットした映画「英国王のスピーチ」の圧巻は、数分のスピーチにある。幼い頃の吃音が原因で人前でしゃべれなくなった王子が、周囲の応援を得て、その病を克服する。そして、国王としてラジオに向かって「(ヒットラーに率いられた)ドイツは敵であり、戦うべき相手だ」と国民に呼びかける。イギリスという国がコミュニケーションの重要性を熟知していたことを思い知らされる▼コミュニケーションこそが、グローバル社会を生き抜くキーワードではないか。組織は命令の遂行が大事だ。だが、その命令の背景にあるものを、トップは飽くなきエネルギーで語り続ける必要がある。ここでは阿吽の呼吸は通用しない。海外事業の成功は「知らしめる」から始まる。