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2012年07月19日 前へ 前へ次へ 次へ

「世界史を変えた17の化学物質」の面白さ

 「スパイス、爆薬、医薬品 世界史を変えた17の化学物質」(P・ルクーター、J・バーレサン共著。中央公論新社)で化学の面白さを改めて感じた。化学の歴史は人類誕生とともに始まり、東西交易、産業革命、戦争と平和にも関わってきた▼化学を理解するには、化学構造を学ぶべきという著者の信念に閉口する読者も多そうだが、社会と化学を知る"うんちく本"としても一読の価値はある▼この本では化学物質を三分類する。一つは人類が探し当てた天然由来の分子だ。ケシから取れるモルヒネ、タバコのニコチン、お茶やコーヒー、ココアに含まれるカフェインは人類と長い付き合いのある化学物質である。治療に使われ、快感をもたらした。一方でその習慣性によって多くの人生を狂わし、アヘン戦争などを起こした▼第二は天然物の構造を模倣して実験室や工場で作られた分子。天然物とまったく同じ染料のインディゴ、天然物の構造を少し変えたアスピリンがある。ナイロンや合成ゴムもこの範疇に入り、近代化学産業の輝かしい成果である▼最後に、未来の文明に重大な影響を与えるものとして遺伝子組み換え物質を予言する。化学の歴史には"光と影"が存在する。これからもリスクに向かい合うことが迫られるが、それでも化学は魅力的な技術、産業であり続ける。


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