保安力評価システムに積極的参加を
高経年化が進むわが国の石油化学、石油精製プラント。主要設備は保守・改善が実施され安全性が維持されているものの、末端部分での劣化見落としによる不測の事態発生の懸念は常につきまとう。設備効率の向上なども改修で対応するため、潜在リスクも増大している。法令を順守した対策だけでは化学プラントの安全確保は不十分で、自主管理の重要性が増している。
プラントに熟知したベテラン社員の引退が続いた結果、若手オペレーターが急増している。教育され質は高いが、今は画面でプラントをコントロールする時代。現場を歩き事故も体験したベテラン世代に比べると、危険に対する感性が低下しているようだ。大規模改修が少なくなったことで、現場での研修機会も減った。品質と安全を支えてきた現場力をどう維持するか、企業は悩んでいる。
安全工学会が今年秋に「保安力評価システム」の提供を始める。プロセス安全管理、設計、運転、変更管理など「安全基盤」と、組織統率や動機づけ、学習伝承など「安全文化」の達成度を定量的に評価するレイティングシステム。現場力の維持・強化に向けた企業の自立的活動を支援するために開発した。評価項目と解説書に基づき、環境安全部長などが各評価項目を5段階評価する。点数を付けた理由、良好な事例などについても記入される。
評価結果は、新設する「保安力向上センター」が第3者機関として検証・分析し、データベース化する。自社のレベルや弱点の把握だけでなく、他社の事例を共有できる。石油、石化企業に対するヒアリングでは、業界内および経年的な自社の位置付けを相対評価したい、安全強化の次の一手を知りたい、目指すべきゴールを知りたいなどの意見が寄せられていた。
保安力評価センターは、安全工学や化学プロセス、物質安全分野の学識経験者、企業のシニアエンジニアで構成され、自主評価結果の検証や分析に加え、事業所のウイークポイントの抽出や改善策の提案なども行う。第三者評価およびコンサルティングは、製造・安全文化に精通したシニアエンジニアが担当するため、技術伝承および安全技術者の育成も期待できる。
参加企業が増えれば、評価結果と安全成績との関連性が明確になり、さまざまな課題を産業界で広く共有することも可能になる。保安力評価を通じ、大手企業の知見や教訓を中堅企業に移転させることも重要だ。安全工学会は大手石化企業に対し、保安力評価の実施とシニアエンジニアの派遣を要請している。企業の社会的責任の一環として、積極的な協力を望みたい。