三菱化学 石塚博昭氏
▽ 現在の心境は。
「やることは決まっている。すでにすべての事業について社内で問題点、戦略を示した。リチウムイオン電池なら4商材をすべて持つものの、当社が戦うべきは負極材と電解液だ。ここにコミットし世界シェアを独占するつもりで拡大する。窒化ガリウム(GaN)基板では社内での技術論議に拘泥せず、早期に顧客が満足する商品を作り上るといった具合だ」
▽ 石油化学事業は厳しい環境です
「鹿島、水島のエチレンクラッカーの構造改革をやり遂げる。また、誘導品ではエチレンカーボネートなど収益性の高い事業にもう1回金を張る。ポリプロピレン(PP)は汎用品を縮小しつつ、鹿島の気相法設備をフル稼働して戦い抜く。高機能品は四日市工場・技術センターの開発設備(VPX)でメタロセン触媒を用いた次世代プロセス・製品の開発を進める。C4はブテンからブタジエンを製造する技術を早期に実用化につなげていきたい。日本では難しくなったオキソアルコールやアクリル酸は海外への技術供与で稼ぐ」
▽ その他の事業はどうしますか。
「バイオ事業では黒埼事業所のポリカーボネート(PC)設備を改良し、イソソルバイドポリマーの量産プラントを今年8月にも稼働させる。カーボンケミストリーはこれまで国内中心であったが、韓国ポスコとの合弁をテコにアジアでの収益性を高めていく」
▽ グループの連携深化も欠かせません。
「私は三菱ケミカルホールディングスのスペシャリティケミカルズのミッションコーディネーターとして、グループのシナジーを最大限に高めるという役割も担っている。ただ、三菱化学のなかにはイオン交換樹脂やコーティング材、食品添加物などさまざまな素材があり、子会社も拡大している。まず三菱化学のなかの技術的つながりを高めていく」
▽ グローバル事業の方針は。
「サウジ基礎産業公社(SABIC)、タイのPTT、包括提携関係にある中国石化(SINOPEC)の3社とのアライアンスが軸となる。シェールガス革命が叫ばれているが、サウジの天然ガスは価格がさらに4分の1と競争優位だ。グループでは三菱レイヨンのメチルメタクリレート(MMA)が加わろうとしており、サウジの石化事業にはこれまで以上にコミットする必要がある。PTTとは植物原料を用いたバイオコハク酸や1・4ブタンジオールもバイオ原料化し、タイで共同事業化を進める」
▽ 目指す姿は。
「三菱化学は世界に冠たる素材、マテリアルのメーカーで、他にない製品を提供する化学メーカーであるべきというのが持論だ。世界市場で他社が作れないもの、あるいは同じ素材でもどこよりも安く供給するのが使命。素材を仕入れ、製造し、売るというメーカーの基本にもう一度立ち返りたい。中期経営計画の最終年である15年に向け、今夏をめどに事業の濃淡を付けたい。社員には就任当初からあらゆる機会を通じ考えを伝えてある。末端まで一丸となって取り組んでいく」
(聞き手=田中四郎編集局長)
横顔
歯に衣着せぬ物言いで圧倒する速球派エースは「物事をシンプルに考え決断するのが特徴」と自己分析。石化畑から社長に就任したが、情報電子材料系など石化以外の事業についても、本質論で担当者の内角をズバリと突く。趣味は「仕事。あとは愛犬リヨン(パピヨン)との散歩かな」と明るく笑う。
〔石塚博昭氏=いしづか・ひろあき〕1972年(昭和47年)東京大学理学部化学科卒、同年三菱化成工業(現三菱化学)入社。07年三菱化学執行役員、09年4月常務執行役員、同年6月取締役常務執行役員、11年代表取締役専務執行役員。12年4月社長就任。兵庫県出身、61歳。