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2012年05月28日 前へ 前へ次へ 次へ

マンデークローズアップ 汎用化進むPC樹脂

細井_SABICカヤン1.jpg 「近い将来、ポリカーボネート(PC樹脂)はエンプラと呼ばれなくなる」。こう語るのは国内大手メーカーの営業本部長。海外で大型投資が相次ぎ、汎用化が急速に進むPC樹脂市場。かつて準エンプラと呼ばれたアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂とほぼ同じ構図ができ上がりつつあり、国内メーカーは付加価値分野で生き残りを図ろうとしている。
※15年に550万トンへ※
 PC樹脂はナイロン樹脂と並ぶ代表的なエンジニアリングプラスチック。透明で耐熱性、耐衝撃性、光学特性に優れ、電気・電子部品やOA機器、光ディスク、自動車部品などに幅広く用いられている。
 2010年の世界市場は推定で355万トン。年は世界的な景気減速の影響を受け需要が伸び悩んだが、12年以降、再び安定した成長が見込まれており、年には550万トンに拡大すると予想されている。
 需要拡大を背景に設備増強が相次いでいる。とくに、ここ数年はSABICグループとバイエルマテリアルサイエンスの海外2社の投資が目立つ。SABICは昨年、サウジアラビア・ジュベイル工業地区のカヤンで年26万トンの新工場を稼働させた。中国・天津では中国石油化工総公司(SINOPEC)との共同プロジェクトに合意し、15年に同26万トンプラントを立ち上げる計画。
 バイエルは中国・上海で新プラントを建設中で、13年に同20万トンを増産。14年から既存設備の増強に着手し、16年までに同国で同50万トン体制を構築する。15〜16年にかけて2社だけで総生産能力は同300万トンを超える見通し。
※市場は「2極化」※
 市場ではリーマン・ショック以降、メーカーおよび顧客とも「ハイスペック化」と「ダウンスペック化」の2極化が加速している。とくに汎用分野では供給量拡大を受けて価格競争が激しい。現在の市況は難燃ABS樹脂などとほぼ同水準とみられ、ABS樹脂との差が徐々に縮まっているようだ。
 さらにSABICのカヤン工場で製造された製品が今年から中国を中心に本格的に市場に出回るとみられ、「大きなインパクトを与える」(国内メーカー)と警戒感を募らせる。
 一方、汎用化にともない「これまで価格がネックで使用されていなかった用途にも使われ始める」(同)と新たな需要創出を期待する声も聞かれる。
※川下分野を強化※
 国内では今年、中国で三菱化学が同6万トン、三菱ガス化学が同8万トンプラントを稼働、帝人化成も中国で増設を検討中。ただ、生産規模では海外2社に大きく差をあけられているのが現状だ。
 付加価値分野での需要取り込みが課題となるなか、帝人化成はコンパウンド品の販売比率を高めると同時に、樹脂グレージングを含めシート・フィルムといった川下分野を強化。また、中国で現地のシート加工メーカー2社と提携するなど新たな事業展開を模索している。
 ABS樹脂と同じ道を歩みつつあるPC樹脂。国内メーカーは付加価値分野に特化した差別化を進めるのか、海外市場に活路を見いだすのか、戦略の巧拙が今後の成長を左右するだろう。

【写真説明】
昨年稼働したSABICのカヤン工場。相次ぐ能力増強にともない汎用分野で価格競争が激しくなっている


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