高機能部材産業の新たな発展の課題
高機能部材産業が注目されて久しい。東日本大震災によるサプライチェーン寸断で、高機能部材ならびに関連材料の供給が停止して、国内のみならず海外の電機、自動車産業などの生産に影響を与えた。化学関連企業は高機能部材を戦略事業に位置付けて強化しているが、国内顧客の相対的競争力の低下に加えて、部材分野においても韓国、中国などアジア企業の追い上げを受け、新たなイノベーション創出が急がれている。
企業活力研究所はこのほど、「ものづくり産業のイノベーション促進策」に関する調査報告書をまとめた。東レ、富士フイルム、JSR、日東電工、三菱化学、新日本製鉄など高度部材事業で先行した企業のほか、ソニー、デンソーなど部材のユーザー企業へのヒアリングなどを通じて、わが国部材産業の特徴や直面する課題をまとめ、イノベーション促進に向けての方策、政策要望を提言した。
東レの炭素繊維にみられるように、競争力の源泉に長期の時間軸で最後までやり抜く「ぶれない経営」があるという。富士フイルムは写真フィルムという基盤技術を生かして新規事業に展開、価値創造に成功した。日東電工はナンバーワン技術を追及したが、その際に上限規格ではなく「無限規格」を重視した。このほか組織知の蓄積、ユーザーと密接な連携、多様なものづくり技術を担う企業群の集積など組織力が寄与したという。
わが国部素材産業の課題としては、?機能の極限追及ニーズと、新興国などの低コストニーズ対応との両立?産業界が求める人材ニーズとアカデミアが送り出す人材のミスマッチを解消して、良質な理工系人材の確保?技術者などを介した技術流出への対応?技術力に見合った収益力の確保―を指摘した。
企業が日々模索している課題だが、絶えず事業の見直しや改革に取り組まないとグローバル競争から脱落することになる。研究開発においては、ナノ技術を例に、材料の極限追求には従来の製造プロセスやプロセスエンジニアリングでは限界があるとして、開発者の知識共有化など戦略の重要性を強調した。
人材対策では、産業界と大学との連携強化と柔軟性あるキャリアパスの構築、シニア人材の活用を提案。収益力を高めるビジネスモデルは、技術のブラックボックス化と標準化を組み合わせることが有効とされるが、企業として戦略が問われることになろう。
政策課題も多い。国内立地環境の改善、研究開発基盤の整備はとりわけ重要だ。高機能部材産業がわが国の成長戦略を一翼を担っていることを再確認して早期に実現してもらいたい。