東北バイオバンクで未来型医療を
東日本大震災で被災した東北地方の医療復興と、ゲノム情報に基づく未来型医療を築く「東北メディカル・メガバンク機構」が発足し活動を始める。バイオバンクの構築、東北への医療人材の求心力を高め、診療情報のデータベース化の流れをつくりながら、創薬の研究開発をしやすい環境整備、産学連携の促進、ライフサイエンス関連産業集積による経済活性化などを、同機構がコアとなって推進する。震災復興を成し遂げる原動力として地域住民の健康支援基盤を担いつつ、新しい医療のあり方、予防医療の推進に向け大きな研究成果を挙げることに期待したい。
同機構は東北大学の提案に基づき、国や自治体と調整を図りながら準備を進め、事業を担う組織として発足した。先に成立した2012年度と年度補正分合わせた予算額は214億円でスタートとなる。文科省の専門計画検討会が5月に計画案に対し提言をまとめ、これを受け本格始動する。
期間は10年計画で、最初にバイオバンクの構築へ取りかかる。東大医科研のバイオバンクジャパンに次ぐ規模だが、15万人分(約7万人の家族3世代と、8万人規模の地域住民対象に大規模な疫学健康調査)の血液などDNAを含む生体試料を地域医療機関と連携して収集し、試料から得られるゲノム情報を解析・データ化する。個人の遺伝的要因解析に基づくゲノム医療を次世代医療として成り立たせるには、「遺伝子」「環境」「疾患」3つの因果関係を明確にしなければならない。バイオバンクの役割は極めて大きい。
他地域の主な医療、研究機関に提供し詳細な解析を行ってもらうなど同バンクでは、ゲノム情報と収集する健康・診療情報を組み合わせ、複合化し一元管理する新しいタイプの臨床医学研究基盤システムを築く。成果は被災地住民の生活習慣病や疾病予防、個別化医療実現に役立てる。岩手医科大学とも連携し進める予定である。
東北は震災以前から医師不足など「医療過疎化」問題が横たわる。次世代型医療体制を示そうとする取り組みには医師、バイオインフォマティシャン、治験コーディネーターなどの人材確保と養成が必要である。求心力を高める魅力的な方策や仕組みを同機構が示し実行していくうえで、国や他地域の医療機関も協力が求められよう。
また同機構のもう一つの役割に、震災によって地域住民の診療情報が失われた反省に基づいて、情報通信化を推進するとともにデータのあり方を見直し再発防止に結びつけることがある。安心して医療が受けられる体制をぜひ実現してほしい。