一段と加速する製造業の海外投資
成長する海外市場、東日本大震災を契機にしたサプライチェーンの再構築、そして円高定着などによって製造業の海外投資重視が一段と鮮明になっている。経済産業省は「海外現地法人の動向」に基づいて海外設備投資比率を算出したが、2011年10-12月期は18・3%と、調査開始以来最高を記録した。製造業の海外志向は避けられないとしても、このまま放置すると雇用など深刻な問題が予想されるだけに、国内投資の促進にも知恵を絞る必要がある。
経産省は製造業の海外現地法人の売上高、設備投資額、従業者数を四半期ごとに調査している。調査を開始した01年は海外売上高比率、海外設備投資比率ともほぼ10%だった。為替レートが1ドル=120円程度だったこともあり、わが国製造業は国内生産中心でも事業展開が可能だったいえそうだ。
その後、国内市場が伸びなかった半面、アジア新興国経済の急成長が続いたことで、海外展開が加速して海外売上高比率ならびに設備投資比率はほぼ右肩上がりに上昇した。売上高比率は07年になると15%以上に定着、11年4-6月期は17・4%と過去最高となった。ただ、これには震災による国内生産の急減があり、10-12月期は15・4%に低下している。ちなみに同期の化学工業の海外生産比率は13・0%。30%台の輸送機械、20%台の電気機械に比較すると、海外展開は遅れている。
設備投資は海外に軸足を移す傾向がより強まっている。海外投資は07年から08年に増加するが、国内投資も堅調だったことで海外投資比率は緩やかな上昇にとどまった。リーマンショック後の国内経済停滞に対し、アジアの経済発展によって設備投資の海外シフトが加速する。
10年10-12月期に15%台に上昇した海外投資比率は、11年になると15・0%、18・1%、15・6%で推移、10-12月期は18・3%となった。震災後の事業継続計画(BCP)見直しに加えて、急激な円高が投資の決断を後押ししたようだ。化学工業の海外比率は、輸送機械などに比べると低いものの10~12月期に14・3%となっている。
製造業の海外投資にブレーキがかかることは考えにくい。これは12年4-6月期までの見通し調査でも明らかだ。一方、国内経済が縮小すれば国内投資は一段と落ち込む。さらに過剰な規制が投資コストを押し上げて、生産設備にとどまらず技術開発のために試験設備の導入を制約すると、マザー工場として役わりも果たせなくなる。成長戦略の策定、そして魅力ある投資環境を提供できないと、外資系企業も含め国内投資は先細りすることになる。