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2012年01月17日 前へ 前へ次へ 次へ

リスク管理に軸足を移した労安法

 化学物質をリスクに基づいて管理しようとする国際動向に対応して、労働安全衛生法(労安法)規制に事業者の創意工夫を認める緩和措置が導入される。化学物質を取り扱うのは化学メーカーだけでなく、広範な産業に広がっており、中小企業も多い。これまで労安法では自律的管理に委ねにくい事業所も多いとして細かく規定してきたが、一定の条件に限定しながら自主判断に基づく多様な対策を認めた。今回の措置を契機にリスク管理が浸透するような啓蒙普及を厚生労働省に望みたい。
 化学物質の製造・使用における人の健康や環境に対する悪影響を2020年までに最小化するという国際合意(WSSD合意)に基づいて、化学物質の関連規制が改正に向けて動き出している。労安法では化学物質による労働災害防止に取り組んでいるが、労働者が曝露すると重篤な健康被害を生じる物質が多いことに加えて、必ずしも化学物質の取り扱いを熟知していない事業者が多いことで、細かく規制する傾向にあった。
 一方で、製造工程の多様化・複雑化が進み、化学物質の種類も増加していることで、効果的・効率的な対策を導入するためには事業者の創意工夫が必要とする意見も根強かった。厚労省は昨年4月、「職場におけるリスクに基づく合理的な化学物質管理の促進のための検討会」を立ち上げた。中心テーマは、有害物の発散抑制の方法を局所排気装置(局排)などに限定している現行法令の見直しだった。
 3回の検討会を通じて、有機溶剤中毒予防規則などの特別規則に基づく措置による仕様規定から、措置の結果である管理濃度を守ることを中心とする性能規定に改めることにした。英国や米国でも仕様規定から性能規定に改める動きがあり、わが国も一定の条件下で事業者の自主判断で多様な発散抑制措置を選択できるようにした。
 具体的には、有機溶剤中毒予防規則の有機溶剤(第3種を除く)、特定化学物質障害予防規則の第2類物質および鉛が対象物質になる。これらを局排以外の発散抑制方法で第1管理区分を達成でき、所轄労働基準監督署長が許可した場合に認められる。この申請はこれからだが、これまで柔軟性を欠く傾向が指摘されていた労安法に自主的判断が導入されたことを産業界も評価しており、定着することを期待したい。
 報告書では、事業者に作業環境測定データなどを現場の労働者へ周知させることも求めている。産業界と行政が一体になって職場における化学物質リスク軽減に努力するとともに、産業競争力強化の視点で引き続き柔軟性のある管理を望みたい。


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