電力制限へ戦略的な取り組みを急げ
東日本大震災にともなう東京電力福島第1原子力発電所の事故は、今夏、未曽有の電力制限をもたらした。懸念された今冬について政府は、日本全体の需給はほぼ拮抗するとの見通しを明らかにしているが、原子力発電への依存が高い関西電力や九州電力管内ではピーク電力の不足が指摘されている。政府は革新的エネルギー・環境戦略の基本方針を策定を進めているが、その中核に電力制限からの早期脱却を進める決意を示すべきだろう。
経済産業省によると、今冬の電力需給バランスは定期検査で停止中の原子力発電所が再稼働しない場合でも今夏ほど深刻にならない見通しだ。東日本では、東北電力の予備率が3・4%(1月)不足するが、東電など3社合計では予備率は4・6%のプラス。また、中部・西日本では、関電および九電の予備率がそれぞれマイナス7・1%、同2・1%と厳しい状況だが、中部電力を含めた6社合計では0・6%の予備率をかろうじて確保するという。政府は計画停電や使用制限令の発動はしないが、関電と九電のピーク電力の不足で需要家への数値目標をともなう節電要請を行った。
状況が厳しい関電管内では、大口・小口需要家、家庭に対して使用最大電力を基準電力の90%を超えない水準に抑制することになる。九電管内も同様に5%以上の節電を求める。さらに、供給面で積み増し努力を続ける一方で、機動的な融通を行うことで、需給が逼迫する地域の需給バランスを確保していくことにしている。
ここで政府が打ち出しているのが、電力需要の「見える化」の徹底とともに、省エネ促進と多様な主体が参加した供給力増強支援である。ここでは、規制制度改革が不可欠で、対応を急ぐ必要がある。
当面、政府に求められるのは、原子力発電所の再稼働である。福島第1原発事故の徹底的な検証を進めながら、より高い安全性を確保しなければならない。安全性が確認された原発については、速やかに再稼働する基本指針を地域・住民に丁寧に説明する努力が不可欠だろう。
懸念されるのは、来夏の電力の需給バランスである。気温の変動や電力会社の供給力低下などの要因が重なれば、今年以上にリスクが拡大する可能性がある。ここでは「リスクの最大拡大」をにらみながら、供給力の積み増しをさらに準備する必要がある。
政府は、来年夏にはエネルギー基本戦略を含む革新的エネルギー・環境戦略を策定する予定だが、できるだけ早い段階での「電力制限国」からの脱却を明示すべきだろう。