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2011年11月29日 前へ 前へ次へ 次へ

不透明時こそ弛まぬ顧客対応努力を

 化学関連各社の上期業績は、東日本大震災や原材料価格高騰、過去最高水準の円高など複数要因が重なり、収益が悪化した企業が目立った。震災後のサプライチェーン回復により生産面は回復しつつあるものの、円高は進行し、さらに欧州の債務危機や米国経済の鈍化、中国の金融引き締めなど、先行き不透明感は拭いきれない。さらに激しさを増すであろう海外勢との競争のなかで、難しい事業運営を迫られている。
 代表的なファイン・スペシャリティケミカル産業の一つである塗料業界は、今年度上期に大手8社中7社が減益となった。急激な円高や震災影響もあり、自動車用塗料が落ち込んだことなどが響いた。ただ、震災絡みの需要が業績に貢献する部分もあった。遮熱塗料のほか、環境対応型塗料なども節電対策から販売量が増加。復興需要で工業用塗料が伸びた企業もある。
 印刷インキ業界も飲料・食品向け軟包装材関連のグラビアインキに特需が発生するなどプラス要因はあったが、震災によるマイナス面は大きかった。原材料の調達難に加え、広告自粛によるオフセットインキが伸び悩み、新聞インキもページ数減少などの影響を大きく受けた。樹脂コンパウンドを手掛ける企業は、自動車やOA機器分野の減産が響いている。
 とくに印刷インキは原材料調達が一時、危機的な状況にあったが、各社の代替原材料の調達努力で克服した。あるインキ用樹脂メーカーは、「顧客から依頼を受け、代替品供給に向けて急ピッチで製品開発を進めた。サプライチェーンが元に戻っても、代替需要のすべてがなくなることはないだろう」と、半ば期待感を込めて話す。
 ここにきての液晶ディスプレイの生産調整の動きは、同分野に携わる企業に影響を与え、下期についても収益の圧迫要因となる。さらにタイの大洪水で自動車減産が強いられ、素材企業の打撃も大きい。冬季の電力問題なども不安要素に加わり、通期業績については概ね伸び悩みを想定するところが多い。
 震災により、わが国素材産業の存在感が再認識されたことは衆目の一致するところ。ただ同時に、日本からの素材供給がストップした海外顧客は様々な代替品を駆使し、日本製以外でも使いこなした現実がある。だが、この環境下でも常に、顧客に求められ続ける存在でなければならない。とくに幅広い業種を抱えるファイン・スペシャリティ産業は、バルク産業とは異なり顧客と一体になった取り組みが不可欠だ。不透明ななかでも、機能や品質などに対する顧客要求に絶えず対応していくことが競争力につながる。


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