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2011年10月20日 前へ 前へ次へ 次へ

地域主役のマリンサイエンス拠点に

 東日本大震災から約7カ月が経過し、政府の被災地への復旧・復興の取り組みの方向性がようやく見えてきた。その1つに文部科学省を中心とする「東北マリンサイエンス拠点」計画が打ち出された。被災した沿岸地域に産業・集落を復興させる施策だが、それにとどまることなく、将来に向け三陸地域が世界に誇る海洋資源研究のコア拠点として新たな価値を生み出す技術発信の場になってほしい。
 復興庁創設とともに、施策の枠組みとなり被災地の規制緩和や支援など盛り込んだ復興特別区域(復興特区)法案の概要が今月まとまった。第3次補正予算の策定作業も始まったが、被災地に小さくとも希望の明かりが再び灯るように、拠点形成が整備が急がれる。
 東北マリンサイエンス拠点計画は岩手、宮城、青森3県の三陸海岸沿いの各県水産試験場、大学や研究機関の研究施設、自治体、地域漁協などが主体にネットワークを整備し、民間企業や海外の大学・研究機関と連携協力する仕組みを形成する。海洋生態系調査、養殖、海産物の加工技術高度化、機能性の付与などの技術開発まで幅広く手がける。津波で甚大な被害を蒙むった釜石の岩手県水産技術センター、水産総研の宮古栽培漁業センターなど現地機関が加わる予定。蓄積したノウハウを生かし、まず分析機器や地元の協力を得ながら海洋調査船など基盤整備から着手する計画だ。
 三陸沿岸には、外海砂浜にヒラメ・カレイ類、海草藻場にメバル、ニシン、エビ・カニ類、岩礁藻場にアワビ、ウニなど豊富な海洋資源を育む生態系が存在した。しかし津波・地震により多量な瓦礫の堆積、藻類の喪失、岩礁への砂泥の堆積などで沿岸域の漁場を含め海洋生態系が劇的に変わった。変化した海洋環境で漁場の復興に役立つ情報、技術、知識の創出には水質・海底状況、プランクトン、漁場の変動予測など裏付けとなる海洋調査が重要な作業になる。自然を相手にするだけに難易度は高いが、地域ネットワークの力を結集すれば、必ず道は開けるだろう。
 復興特区法案に組み込もうとしていた漁業に民間企業の参入を促す水産業復興特区(漁業特区)構想は、地域漁協の猛烈な反対で、宮城県では棚上げとなった。これに対して、マリンサイエンス拠点は化学、バイオ、IT、測定機器メーカーなど異業種が東北に集積して「知」を組み合わせ、新素材、エネルギー、薬剤候補探索なども含めた新産業創出の環境が整えば、雇用含め地域への貢献度、相乗効果は高いはずである。自然科学の成果の恩恵を受けるのは地元優先でありたい。


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