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2011年08月30日 前へ 前へ次へ 次へ

メリハリが必要な科学技術基本計画

 1995年に制定された科学技術基本法に基づいて、96年度から5年ごとに科学技術基本計画が策定されてきた。今年度は第4期基本計画の初年度だが、東日本大震災によって再検討が迫られ、8月19日の閣議で決定した。基本計画は10年先を見据えて、今後5年間のわが国の科学技術政策を方向を示してきたが、第4期ではグリーンおよびライフイノベーションを軸に課題解決型研究開発の推進に加えて、震災・原発事故を踏まえて安全かつ豊かな質の高い国民生活への貢献を打ち出した。
 これまで3回の基本計画では、基礎研究とともに戦略重点分野推進を柱に据えてきた。ただ基礎研究では質の問題が指摘され、重点分野研究においては研究者側の"サプライサイド"の発想に陥りがちと批判されてきた。さらにポスドク問題にみられるように若手研究者が将来展望を描けないという悩みも深刻化している。
 これらの反省に基づいて、昨年12月に総合科学技術会議が答申したのが課題解決型の研究開発。政府の新成長戦略であるグリーンおよびライフイノベーションに対応した研究開発を第4期計画で重視する方針に転換した。ただ基礎研究・人材育成などの方針は変更しなかったため、第3期計画を継続したという印象も拭えなかった。
 3月に発生した震災・原発事故への対応は科学技術も真価が問われている。このため復興・再生の実現に向け「安全・安心な国づくり」へのイノベーションを最重要課題に位置付けた。とりわけ原発事故の収束には原子炉の安定的冷却状態の確立や、放射性物質による土壌汚染除染などに関する幅広い科学技術の知見の結集が必要になる。さらに今回の事故を検証して再発防止に向けた方策を世界に示すことも日本の責務である。
 一方で、グリーンイノベーションに関する研究開発も方向転換が迫られる。原発事故以前は低炭素社会がキーワードになり、核燃料サイクルの推進も謳われていた。しかし原子力政策の見直しが必至だけに、エネルギー政策・温暖化対策・成長戦略の総合的視点から方向性を見いだす必要がある。
 原発事故は科学技術に対する不信につながっているが、安全かつ豊かな国民生活の基盤になるのは科学技術の進歩である。経済成長の牽引役でもある。第4期基本計画は、震災・原発対応の追加したことで課題を詰め込みすぎた感は否めないが、優先順位を精査してメリハリのある政策として具体化すべきだ。その際、第3期計画では達成できなかった5年間で25兆円、対GDP比1%の政府研究開発予算の確保は前提になる。


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