活発化する製薬企業の新興市場展開
日本の製薬企業が新興市場の開拓に本腰を入れ始めている。準大手の塩野義製薬は今月1日、中国のC&Oファーマシューティカル・テクノロジーを買収すると発表した。買収で中国市場に本格参入する。国内製薬大手各社も中国事業の強化に動いているが、塩野義は現地企業の買収で同国での販売網を一気に構築する。第一三共が2008年にインドの製薬大手ランバクシー・ラボラトリーズを買収したのは衝撃的だったが、新興市場への進出や足場固めなどを目的とした買収・提携が今後相次ぐことになりそうだ。
C&Oは本社を香港に置き、シンガポール証券取引所に上場。中国全土の約30万軒の診療所・病院・薬局への販売ネットワークを構築している。塩野義は筆頭株主から発行済み株式の約24%を取得した後、子会社化を目指した公開買い付け(TOB)を実施して66%まで引き上げる。買収総額は143億円を予定。C&O株式の29%を保有する住友商事とは今後、共同で事業を推進する。
塩野義は08年に米サイエル・ファーマを約14億ドルで買収して米国での事業基盤を構築した。現中期経営計画では中国などアジアでの事業強化も掲げており、その一環として中国でも買収戦略に踏み切る。
国内製薬企業の海外進出動向を歴史的にみると、70年代はアジアが多く、80年代は北米、90年代は欧州、そして00年以降には再び北米へと変遷している。矢野経済研究所が最近まとめた調査結果によると、異業種も含む主要製薬80社の海外533拠点の地域別トップはアジアの210拠点で、欧州の153拠点、北米の137拠点と続いた。国別では米国が130拠点と最多で、次いで中国の91拠点、英国の38拠点、ドイツの29拠点などとなっている。
世界の医薬品市場の成長牽引役が新興国へとシフトするなか、各社のグローバル戦略も大きな転換期を迎えている。これからは新興国展開が大きな潮流になり、なかでも15年には日本を抜いて世界第2位に躍り出る可能性がある中国は、当面の最重要市場に位置付けられる。インド、中南米、中近東などへの展開も課題になってくる。
第一三共は、後発医薬品を世界展開しているランバクシーの買収で新興国の事業基盤を一気に拡充した。武田薬品工業がスイスの製薬大手ナイコメッドを買収するのも、新興国への足場構築が狙いである。近年、国内製薬大手の買収でとくに目立ったのは、がん領域の事業強化を狙ったものだった。今後は企業規模の大小にかかわらず、販売地域の拡大を意図した戦略的投資の活発化が予想される。