超高齢化社会の基盤構築に企業力を
2030年の超高齢化社会に合わせた社会システムや快適な生活環境づくりに向け、産業界のロードマップがまとまった。産学協働で進めた東京大学ジェロントロジー・コンソーシアムが議論を重ねた成果で、多くの技術開発と産業創出を通じて理想的な「未来」を築いていこうという想いが込められている。高齢化の進む日本から、未来の長寿社会に貢献する企業の先進的取り組み、課題解決に向けたイノベーションによって、先導モデルを世界にも発信してもらいたい。
ジェロントロジーは、老年学、加齢学と訳され、高齢化社会で起こる可能性のある様々な問題解決のため知恵をつなぎ、成果を社会還元するのが目的。医学、生物学、栄養学、心理学、建築学などあらゆる科学の研究成果と知識を結集させ、高齢化社会のニーズに適した方策を提示、実用化に導く。
ロードマップは、人生100年時代に相応しい生きがいとライフデザイン、食生活、医療・介護・予防、住環境など10項目に分け、さらに17のキーファクターを選び出して取り組むべき方向を示している。現在の技術や課題からみて、仕組みや制度などを整備すべき期間として概ね20年(中期)までを目標にする。ただ戸別配送ロボット、交通ネットワークなど公共関連インフラは30年までかかる長い道程だ。
例えば食生活では高齢者向け栄養改善プログラムの確立、PHR(個人向け健康情報サービス)と連動した食事管理普及を取り上げた。また医療・介護・予防ではウエアラブル型生体センサによる診断モニタリングなど介護予防機器の開発普及を指摘。さらに医療と介護・看護が分断されることなく、一元的な連携システムを支える情報通信技術を確立、在宅遠隔監視家庭用医療機器、新在宅ケアシステム実現などを目指していく。
コンソーシアムには45社が加盟、化学系企業からは地球快適化インスティテュート(三菱ケミカルHD)、大正製薬、資生堂、花王、ライオン、味の素、富士フイルムなどが参画した。
30年には、人口の3人に1人が65歳以上と予想され、かつてどこの国も経験したことのない超高齢化社会を迎える。確実に到来する時代を前に、化学産業の役割りも増える。そのためには、素材開発と消費者に近い産業の密接な連携が重要ではないだろうか。
コンソーシアムの成果を引き継ぎ、化学系など44社参加するジェロントロジー・ネットワークが具体活動を進めることになる。今月、千葉県柏市において、その一つである「健康長寿都市」のモデル構築が始まる。