ニュースヘッドライン記事詳細

2011年07月20日 前へ 前へ次へ 次へ

日本の"一流品"が売れ続ける方策

 東日本大震災は日本のファイン・スペシャリティケミカル製品の重要性を再認識させたが、一方で自動車や電気電子などの需要業界に複数購買の必要性を改めて投げかける格好になった。他のソースから調達を余儀なくされた顧客は、日本の"一流品"ではなく"二流品"を使いこなすことで製品の安定供給責任を果たした。いったん途切れたサプライチェーンが大震災前の状態に戻るか不安視する声もある。日本の素材産業は新たな課題を突き付けられている。
 高機能・高品質の日本製品の調達が途切れた国内外の顧客は、日本製品に頼らず海外ソースから調達するケースが起きた。このことは顧客のBCP(事業継続計画)の一環からも当然のことだ。ただ、複数購買の拡大により日本の素材を取り巻く競争は激しくなる。顧客は性能・品質とコストとの見合いで発注先を選ぶが、大震災を契機に安定調達が以前にも増して重要な選択肢になってくる。
 これ以外にもファイン・スペシャリティケミカル産業を取り巻く不安要素は多い。輸出に際してネックになっている円高の先行きが不透明だし、さらにFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)にともなう関税撤廃で海外企業との競争激化も予想される。こういう状況下にあって、大震災にともなう複数購買の拡大が素材メーカーに及ぼす影響は計り知れない。
 このなかで生き残るための施策といえば、さらに技術・品質に磨きをかけ付加価値を高めること。複数購買に対しても、あくまでも日本の"一流品"をメインで使ってもらうことが必要になる。
 もちろん生産拠点の分散化も重要性を増しており、早々に検討を開始した企業は多い。東京電力福島第1原子力発電所の警戒区域内に工場を抱える企業では、有機化学品受託合成のみどり化学がいち早く埼玉県秩父市に新工場建設を決定したほか、具体化の段階まできている企業もある。一方で、ファイン・スペシャリティ産業には中小規模の企業が多く、その点では他社との協業、ライセンス供与を含めた生産拠点の分散化も選択肢に挙がってこよう。
 「グローバル・ニッチ・トップ」を標榜してきたファイン・スペシャリティケミカル企業が今後、ニッチ市場でありながらもダントツでシェアを維持することは難しくなるかもしれない。顧客サイドは安定調達を前提とした複数購買を拡大してくるだろうし、日本の"一流品"が売れ続ける保証はない。安定供給も素材における信頼性の一部として捉え、あらゆる面で顧客の要求に応えていくことが今以上に重要になってくる。


Copyright(c)2010 The Chemical Daily Co., Ltd.