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人と話題 高橋裕東京大学名誉教授
総合治水対策の概念提唱で日本国際賞
気候変動適応策でも重要性を訴える
フィールドワーク、研究の原点
「河川流域の概念とか管理を説明するのは実に難しい。思いかけず授賞対象にしていただけて、とても感謝している」と語るのは、日本における現在の総合治水対策の礎を築いた東京大学名誉教授の高橋裕博士。今年1月、2015年の「日本国際賞」(主催・国際科学技術財団)に選ばれた。
授賞対象分野は『資源、エネルギー、社会基盤』(受賞業績・流域管理の革新的概念の創出と水災害軽減への貢献)。明治以来の治水対策が大きく転換する際に重要な指針を与えただけでなく、その概念は地球温暖化に伴う気候変動でクローズアップされている局所的な豪雨対策などにもつながるものと高く評価された。
明治以降、洪水を食い止めるために各地で連続堤防が作られ、一定の成果をあげた。しかし、大量に降った雨は短時間に下流に押し寄せ、「同じ雨量でも大水害となる」という新たな問題が起こった。
高橋博士は若い頃、河川に足を運んで、流域の人々の生の声に耳を傾けた。そして、それまでの対策は「ダムであれ、連続堤防であれ、決して間違いではなかった。ただ、良いこともあれば悪い影響もあった」ことが明らかになった。まさに「河川は自然であり、一筋縄ではいかない」ことを痛感する。
もともと、河川は肥沃な平野をもたらし、海の豊かさの源にもなってきた。さらに人類はより豊かな生活を求め、河川を管理するようになった。しかし、今や個々の対策だけで解決できる時代ではない。
そこで着目したのが『総合治水対策』だ。森林の保水力など自然の力も含め、河川と共生していくためには全域を見渡した様々な対策を講じる必要性を説いた。この概念は97年河川法改正に生かされることとなる。
どのように気候変動に適応していくかも同じことがいえるという。なぜ、この場所で災害が起こったかを検証してみると、場合によっては、なぜ災害が起こりやすい場所を利用していたのかという結論に導かれるケースもある。「河川事業や水利用だけでなく、土地利用のような都市計画などを包括的に検討する必要がある」と強調する。
高橋博士の研究の基本はフィールドワークであり、これが卓越した観察力を養う原点となった。「仕事を別にしても日々、川岸を歩いて、変化をみつけるのは楽しい」と笑みを浮かべる。一方、最近の大学では土木分野の授業においても、「座学が中心になっている。もっと現場に行って観察しなければ」と警鐘を鳴らす。さらにITは便利だが、若者が過度に頼ってしまうと「見て、考える能力が育たないような気がする。たまには教室、研究室を飛び出して、自分の研究をじっくり眺め、考えてほしい」。
88歳の今も現役の研究者としての目の輝きを放つ。
(伊地知英明、阿桑健太郎)