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2014年11月19日 前へ 前へ次へ 次へ

素材産業も求められるデザイン思考

 塩ビ工業・環境協会(VEC)などが主催する「PVCデザイン アワード」は、柔軟性、加工性、透明性などに優れる軟質塩ビ製品の魅力を改めてアピールする機会になっている。これまで化学素材企業は、高性能・高機能化の技術開発を重視、デザインに対する関心はそれほど高くなかった。プラスチックのなかでも長い歴史、かつ低価格な素材に分類される塩ビも、工業デザイナーの手にかかると輝きを増すことが教えられた。素材産業のモノ作り・コト作りを考えるうえで参考にしたい。
 「PVCデザイン アワード」は、環境・安全問題で逆風にさらされ、市場縮小に危機感を抱いたVEC、日本ビニール商業連合会、日本ビニル工業会、東日本・中日本・西日本製品加工協同組合が軟質塩ビ製品のイメージ回復を目指して始まった。今年は4回目で、268点のデザイン提案と81点の製品が寄せられ、先月末に受賞作品が発表された。
 残念ながら今回は大賞に該当する作品はなかったが、準大賞の透明粘着テープ「0tape(ゼロテープ)」など軟質塩ビの魅力を引き出した製品が数多く誕生した。塩ビに先入観のない若手デザイナーによって、塩ビのイメージを一新させ、新たな可能性を感じさせた。
 日本のモノ作りは、新興国の追い上げて厳しい環境が続いている。アジアが市場としての地位を高めていることが大きいが、日本の高コスト構造や魅力ある製品を生み出せなかったことにも原因がある。エレクトロニクス産業を筆頭に生産拠点としての地盤沈下にいかに歯止めをかけるか、産業界のみならず国を挙げての課題である。
 1957年に創設されたグッドデザイン賞は、日本人の優れたデザインセンスを引き出し、支援してきた。最近では「クールジャパン」事業においてデザイン力が大きな武器になっている。しかし家電など汎用製品では、技術的優位性やコスト削減に力を入れ、デザインに対する関心は相対的に低下した。
 コンシューマー製品を中心に、ユーザー視点で製品開発を進めなくてはならないという反省が生まれている。経済産業省はデザイン思考を重視したサービスの高付加価値化を打ち出した。経営者に対して、デザインの役割を再認識すべきと訴えると同時に、人材育成の重要性を強調している。
 素材産業が最終商品のデザインまで関与するケースは限られているだろう。ただ、これからのモノ作りはコト作りと融合、新たなビジネスモデルを構築しなければならない。軟質塩ビ関連産業の取り組みは、その先駆けになるとして注目したい。


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