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2014年11月18日 前へ 前へ次へ 次へ

帝人 問われる成長戦略(下)

PC、フィルム事業の抜本改革

 帝人は4〜9月期決算で特別損失416億円を計上した。そのうち310億円はシンガポールのポリカーボネート(PC)事業撤退やフィルム事業の構造改革など電子材料・化成品事業で発生した。5日の会見で鈴木純社長は「減損処理で事業の課題を一気に処理した。ソリューション提供型事業体への変化を急ぎ、16年に必ず営業利益500億を達成したい」と不退転の決意を口にした。その前提となるPC、フィルム両事業の構造改革はいまだ途上にある。
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 同社は99年、PC事業でシンガポールに進出。一気に4期まで増設計画を固め、エース級の人材を送り込んで事業を急拡大させた。しかし同国の高コスト体質は早い段階で将来の懸念材料と認識されていたようだ。
 そこで05年、コスト競争力と市場性を兼ね備える中国にPC工場を建設し、日本を含む3極体制を構築。2000年頃から年率7〜8%の成長が続いたアジア市場で一度はトップシェアを獲得するにいたった。
 中国工場は立ち上げ以来フル稼働を続けており、シンガポールにはなかったコンパウンド工場もあるため製品の高付加価値化も図りやすい。鈴木社長は会見で「従来型事業からの脱却が遅れ、近年の環境変化に対応できなかった」と述べたが、リーマン・ショック後にPCの"脱シンガポール"が遅れたことも念頭にありそうだ。
 ただ、日中2拠点にPC生産を集約するだけで収益を安定化できるわけではない。アジア市場は供給過剰が常態化しており、独バイエル・マテリアルサイエンス(BMS)とサウジ基礎産業公社(SABIC)の世界2強は中国で増産投資の手を緩める気配がない。BMSは年内に上海で20万トンの新ラインを完成させ能力を倍増させる計画。SABICは華北で同規模のプラント建設を検討中だ。また、今年に入って営業体制を強化したタイも、BMSと三菱エンジニアリングプラスチックスの牙城。後発の帝人が食い込むのは簡単ではない。
 一筋縄ではいかないPC事業の再構築だが具体策は固まり、樹脂事業としての営業損益は今期トントンまで回復するという見方もある。
 一方、フィルム事業の構造改革の道のりはなお不透明だ。電子材料・化成品事業の営業損益は4〜6月期に黒字化したものの、7〜9月期は再び赤字に転落した。太陽電池バックシート用フィルムなどの収益力回復が進まないことが要因とみられる。
 フィルム事業は米デュポンとの合弁会社を通じてグローバル展開しているため、意思決定に時間を要する面もある。鈴木社長は「合弁相手と交渉中」と述べるにとどめたが、もう一段の構造改革は必須。帝人は今後、高機能化とともにインドネシアなどで生産を拡大したい考え。各合弁の出資構成見直しなども交渉しているとみられる。
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 鈴木社長は「素材は個別事業で生きるのではなく、素材同士を融合・複合して価値を生み出していく。(PCやフィルム、高機能繊維の)素材系事業は一元化するほうがいい」とした。自動車窓材(グレージング)への展開などPCが持つ可能性は小さくないが、さらなる変革に踏み込む必要はないのか。フィルムを含め高機能技術をグループの他事業と早期に融合させ、社会に評価される材料を提供できるか。一層のスピード感が求められている。
(了)

【表説明】帝人のPCおよびフィルム生産体制


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