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農薬の有用性を粘り強く訴えよう
農薬は農作物の増産、安定供給に貢献しているが、人の健康や環境に悪影響を与えているという誤解が消えない。農薬を使用していないことが、安全性の高い食品であるかのごとく強調する販売戦略が後を絶たない。農薬は厳しい安全基準をクリアして使用されていることを説明し、正しく取り扱えば食の安心につながることを粘り強く訴えていきたい。
農林水産省、厚生労働省、内閣府食品安全委員会など農薬や食品の規制に携わる行政機関が主催する「食品に関するリスクコミュニケーション―知ろう、考えよう、農薬のこと―」が開催された。農業や企業関係者、消費者団体、メディアなどから多くの聴講者があった。
土壌微生物の研究を通じて農薬に長年携わってきた山本廣基氏の講演は「農薬はどうして必要?」。農耕地の生態系は自然の生態系とまったく違うこと、同様に栽培植物は自然の植物とまったく違うため、病害虫や雑草に侵されやすいのが農業の宿命と強調。農薬使用による収穫量の増加、農家の労働軽減をデータに基づいて説明した。
農薬取締法を所管する農水省は農薬登録と使用者への指導、厚労省は食品衛生法に基づく農薬の残留基準、食品安全委員会は農薬の食品健康影響評価をテーマに講演した。規制に対する基本的考え方、リスク管理の現状と今後の取り組みを報告した。難解な技術用語、複雑な規制の分かりやすい説明に心がけていたことを評価したい。適切に農薬を使用することで「食の安全・安心」につながるというのが行政の基本スタンスである。
続いて農業関連団体、メディアや消費者団体の関係者も参加した質疑応答に移った。会場からも数多くの質問が寄せられたが、農薬に対する認識や評価は多様であることを改めて感じさせた。農薬や肥料など化学物質を使った農作物は身体に悪いという認識は根強いのも現実である。行政の安全性基準に関連する批判もあった。
気になったのは日本を代表するテレビ局の解説委員の「農薬は基本的に使わない方がよい」という発言。適切な発言に見せかけながら、農薬忌避を助長させるように誘導していると指摘せざるを得ない。
食の安全・安心に関連するテーマはテレビ番組の定番だが、食のリスクを過大に報道して消費者の不安を掻き立てがちだ。不安解消に「予防原則」を導入すべきという考えも示した。科学的知見に基づく報道を増やすため、行政や産業界、農業従事者は的確かつ分かりやすい情報発信を大切にして、一部メディアのミスリードによる風評被害を防いでもらいたい。