ニュースヘッドライン記事詳細

2014年08月26日 前へ 前へ次へ 次へ

人と話題 旭リサーチセンター 府川伊三郎シニアリサーチャー

CO2原料のPC製造プロセスで米化学会から受賞
ライセンスの広がりに期待

 旭化成ケミカルズの二酸化炭素(CO2)を原料とする非ホスゲン法ポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスが、2014年度の米化学会ヒーローズ・オブ・ケミストリー・アワードを受賞した。事業化によって人類に貢献し、しかも収益を上げた成果だけを対象とした賞で、日本企業が選ばれたのは初めて。国内でもグリーン・サステイナブル・ケミストリー賞(GSC賞)の経済産業大臣賞のほか、日本化学会技術賞、高分子学会賞、大河内記念賞などの受賞歴を持つが、台湾からロシア、韓国、サウジアラビアへと生産拠点を広げてきたことが今回の受賞を呼び寄せた。

 旭リサーチセンターのシニアリサーチャーの府川伊三郎氏は13人の受賞者の1人。旭化成で研究開発の初めから携わり、初の事業化となった台湾での製造合弁設立の端緒を開いた。この技術内容を初めて発表したのが米化学会だっただけに、「米国には思い入れがある」。米環境保護庁へ出向いて技術の有用性を説明したこともあった。「欧米の立派な賞をもらうのは今回が初めて。受賞に合わせて、米化学会が2分間の紹介映像も作ってくれた。これを機に、ぜひ欧米にもライセンスが広がってほしい」と期待が膨らむ。
 これまでの道のりは必ずしも平坦ではなかった。「水島技術研究所の所長としてこの研究を進めていたとき、役員会で、後発を理由に開発をやめるという話になった。そのとき当時の弓倉礼一社長が、環境に優しいテーマなので完全に息の根をとめるようなことはするなと言ってくれた」と振り返る。
 窮地を脱した後に幸運が訪れる。研究開発本部の企画管理部長に移っていた府川氏が奇美実業を訪れたとき、許文龍会長と面会する機会を得た。別件での訪問だったが、ライセンシングの話を切り出しところ、「せっかく育てた息子を養子に出すのはよくない。一緒にやりましょう」との回答を得た。これが最終的に共同事業化につながった。「折しも改良技術のいいものが出ていたので、その開発を推進した。研究開発本部ではいろいろなところと交渉したが、こんなにラッキーだったことは、この1件だけ」。
 13年から現職。担当は科学・技術、技術経営。「日本は石油化学一色になってしまった。国内のナフサクラッカーの下で、同じスタイル、同じサイズで、それぞれが誘導品をバランスよくつくらなければいけないというワンパターンに縛られているようにみえる。これまではそれでよかったかもしれないが、これからは日本の企業も国内にとらわれずに、さまざまな原料を前提にもっと自由に発想するといい」とエールを送る。「バイオマス化学にしても、発酵技術と有機合成技術が統合したもの。天然ガス化学や石炭化学はもとより、日本企業が石油化学を通じて培ってきた技術は、原料の多様化が進むなかにあっても、十分に強みを発揮できる」。
(豊田悦史)


Copyright(c)2010 The Chemical Daily Co., Ltd.